伊坂幸太郎

『グラスホッパー』 - 伊坂幸太郎は子供を殺す

変な小説ー。んー、まあ伊坂さんの小説っていつもたいがい変なんですけど、今回あまり余分な要素がなかったのでそういう点が際立ってたかもしれません。伊坂さんは作中で特殊な倫理観を提示することが多いですけど、今回は特に複雑だったと思います。 たとえ…

『チルドレン』 - 正しいダブルスタンダード

陣内さんはずるい! 不当です! この短編5連作の全てに登場してお話の中心となる陣内さんは非常にいい加減な人で、いわゆる「ダブルスタンダード」を絵に描いたような人です。家裁調査官の彼は、ある時は「子供は一人ひとり違うのに」と紋切り型の対応を批判…

『アヒルと鴨のコインロッカー』

相変わらずハズレなしの伊坂さん。読んでる間は意識もしませんでしたけど、最後まで読んでみる『重力ピエロ』と似た構図の作品に仕上がっていて、伊坂さんの基本スタイルを垣間見た思いです。 伊坂さんって、基本的にはすごく柔軟な考え方のできる人なんだと…

『重力ピエロ』の倫理観は苛烈だなあと

ものすっごく面白くて、これでもまだ直木賞には届かないのかーと驚くことしきり。とにかくリーダビリティの高さが異常で、文庫五百ページをすらすらすらと読めてしまいました。一般に文体の軽いと言われるライトノベルでも、なかなかこうはいきません。単に…

『陽気なギャングが地球を回す』

伊坂さん三冊目。なるほど、これは分かりやすい良作ですね。『オーデュボンの祈り』はなまじ推理小説的な体裁を取っている分オチに癖がありましたし、『ラッシュライフ』にはちょっと明確な捉えどころがありません。その点、伏線張りまくりでストーリー一直…

『ラッシュライフ』

登場人物の中に共感できる人が居るかどうかが、お話に乗れるかどうかのわりと重要な要素になりそうな気がします。たしかに色々な人の人生が錯綜するお話ですけど、どんでん返しのあるような派手さとはちょっと違って、あくまで「すれ違う」という感じですね…

『オーデュボンの祈り』

私の中のミステリー像にぴったりと一致する作品でした。(といって私がミステリーを正しく理解しているとはぜんぜん思いませんよ?) 傾向としては山口雅也さんのミステリー作品に近いです。ミステリーとしての驚きを読む人の感動に昇華させることに成功してい…