古川日出男

『ベルカ、吠えないのか?』

諸手を上げて凄まじいと叫びたいイヌのサーガ。 人間の正史に対する、イヌの逸史の物語です。イヌは自らは記録を残しませんから、人間の歴史の裏でイヌもまた連綿とした歴史を綴っていることに私たちは気がつきません。そういったたしかに存在する、けれど今…

『沈黙/アビシニアン』

やー、もの凄い筆圧を感じる作品でした。音楽と悪について語られる「沈黙」と、文字と愛について語られる「アビシニアン」の二編を収録。それぞれが古川さんの長編第二作と第三作です。デビューの瞬間からこんなものを書けてしまう古川さんに戦慄しました。…

『13』

うわーわ。わー。なんとも圧巻。構成はぜんぜん起承転結に倣ってなくてかなりめちゃくちゃなんですけど、目の前にある文章そのものがあまりにも面白いので最後まで途切れることなくぐいぐい引っ張られてしまいました。 この作品には物語的な意味でのわかりや…

『アラビアの夜の種族』

「ファンタジーとして、SFとして、そして何より物語としての傑作です。 最初の二百ページほどは物語の全体像が見えてこず、ページが固くてなかなか読み進められませんでした。ところが後半に差し掛かり、お話の全ての前提情報が揃って視点が大きく開けてから…