舞城王太郎

文脈をいじくりたおす - 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(下)』

面白かったー!「文脈によって真相がどんどん後付けされていく」という体裁で書かれている本作ですけれど、最終的にあらゆる伏線が収束していったことを踏まえると、舞城さん自身はかなり計算ずくで長期的に伏線を制御していたとしか思えません。もしこれを…

批評するより感想書くのが難しい類の小説 - 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(中)』

わけ分かんないけど、わけ分かんないにもかかわらずたしかに面白い、でもその面白さの理由がわかんない……っという混乱に陥りつつも、その混乱に追い立てられるように一気読み。「批評は感想より難しい」*1というのが一般的な感覚*2かとは思うのですが、少な…

文脈を支配した探偵が真相を創り出す - 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(上)』

エセスネインピナー来てるよ〜 ※ええと、このシリーズの感想は二年くらい前に書いてたものでして、なんとなく今までずっとアップしそびれてたのですが、いいかげん放置しすぎたのでメモ整理ついでにアップします。文章がやや古いですがご容赦を。 作中でもろ…

「この愛をいつかは忘れる」ことまで直視する類の誠実さ - 舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

愛に対して誠実すぎる作品。「死にゆく恋人のことを自分はいつか忘れてしまうだろう」なんて可能性すら誤魔化さずに直視する類の、壮絶な誠実さを備えた作品です。 今まで舞城さんが幾度も書いてきたテーマのうち、「選ばれなかったもの/失われてしまったも…

批評するより感想書くほうが難しいと思った舞城王太郎『スクールアタック・シンドローム』

私たちは私たちの倫理観のあり方にある程度の定型を持っていますけれど、それに満足しないのが舞城さんなのかなと思います。虐め殺されたところから始まる友情とか、惨殺され続けることで確認する愛情とか。これは? これは? という風に、舞城さんは一筋縄…

「物語」の「世界おいてけぼり」っぷりが気持ちいい舞城王太郎『みんな元気』

ううー凄く感じるものはあるのに言葉にできない! 舞城さんの作品はいつもまともな感想を書けないんですけれど、決して心に残るものがなかったというわけじゃないんですよねえ。言葉をなくすという表現は言い得て妙だと思います。 短編二つは手に負えないの…

山ん中の獅見朋成雄

一個先の展開が読めず、どんどこどんどこ予想外の新展開が連続する真っ暗ジェットコースターみたいな小説。ただし終着点が降り場でなくカタパルトになっていて、勢いに任せて読者を空中に射出したところでお話は終わります。 だから、結局どこに着地するかま…

『九十九十九』

ハァレルゥヤ! JDCトリビュート……の名を借りて、もうぐっちゃぐちゃやってくれてます。この原作の無視っぷりと比べれば、『探偵儀式』は全然大人しかったんだなあと。『探偵儀式』は原作とのイメージギャップを巧みに利用した表現がおかしさのキモなんです…

『コミックファウスト』

今さら買いました。小説やってた頃以上に太田さんが何やりたいかのか分かりません。まあ面白い作品が読めるなら媒体は何でもいいです。 「ぬるつべピリリ」舞城王太郎 MAIJO! 前回ファウストに載っていた漫画と較べて、絵がかなり上手くなりましたね。あと…

『熊の場所』

ピコォーン。 あああ。例によって舞城さん。思うところは色々あるんですけれど、それを文章化できない自分の表現能が恨めしいです。他の作家さんならそこまでではないんですけど、舞城さんの作品の場合はこの成文化作業がすごく困難。まあ一言で表現できない…

『ファウストvol.6 SIDE-B』

はい、まだ読みきってなかったんです。 『糸の森の姫君』北山猛邦 前作に引き続きトリックがギャグ。狙ってるのか素なのか分かりません。"子供の考えた計画の浅はかさ"がいい感じに出ているので、いいんじゃないかなと思います。桜庭一樹さんの某作品に近い…

『ファウストvol.4』

はい、巷ではvol.5の感想も出尽くした感じのこの時期にvol.4ですよ。ミステリーのフロントラインとやらに読み残しがあったのでvol.5を読むついでにこちらも片付けましたという話。 『廃線上のアリア』北山猛邦 えー? 文芸合宿の短編を除くとこれが実質はじ…

『阿修羅ガール』

グルグルグルグル! 例によって一気読み。主人公の周りで事件っぽいものが起きて『世界は密室でできている。』と同じ方向性になるのかなーという気分で読んでいたら、途中から話がどんどん予想したものからからズレて行っちゃって、あれーあれーとか思ってい…

『世界は密室でできている。』

ボリボリボリボリ……がやたらとおぞましいです。夢に出ます。『煙か土か食い物』に続いて舞城さんは二冊目。ようやくハイテンションな文体以外のところにも目を向けられるようになってきました。気まずい事態に陥ったら、とりあえず何かギャグをやらないとい…

『煙か土か食い物』

これまで舞城さんについては「九十九十九を書いた人」という認識しかなかったんですが、ええ、これでしっかりと個体認識することができました。タナトスだかエロスだかバイオレンスだか、なんだかよく知りませんが、とにかく主人公の一人称はアグレッシヴで…