NOVEL

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』

友達以上探偵未満 (角川文庫)作者:麻耶 雄嵩KADOKAWAAmazon 本人がやりたかったのか周りに乗せられたのか、経緯はよく分からないけど「若めの読者層向けのライトな百合ミステリを書くぞ」という明確な意思が伝わってくる麻耶雄嵩さんの百合ミステリ。謎解き…

酉島伝法『皆勤の徒』

皆勤の徒 (創元SF文庫)作者:酉島 伝法東京創元社Amazon なんかSFらしいSFが読みたいな〜という気持ちになり、そういえばまだ読んでなかった酉島さんに挑戦。 期待通りいかにも難解で、奇想の風景に浸れる小説でした。SF的にはお馴染みのネタを、和語とも漢…

ラノベ人気投票『好きラノ』投票します

いちせさんのところで今年もライトノベルの人気投票をやってると聞いて……。lightnovel.jp こういうのに参加するのはラノサイ杯以来なのでもう十数年ぶりなんですが、今年は絶対に推したい作品があるので一念発起して投票します。対象期間内の作品を他に読め…

揺れ動く心の形に名前をつける。作り込まれた世界と叙情溢れる青春ファンタジー『祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る』

MF文庫Jから出版された新作ライトノベル小説。濃密で要素の多い物語なので一言でジャンルを説明するのもなかなか難しいのですが、ピックアップするなら「異世界ファンタジー」「青春小説」あたりでしょうか。 民族の神話や遺物・国際情勢など、奥行きのある…

出ますよ、アリュージョニスト作者の新作が

出ますよ。祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る。 (MF文庫J)作者:品森 晶KADOKAWAAmazon 作者の最近さんは『幻想再帰のアリュージョニスト』のWeb連載を7年にわたって続けていますが、商業小説の出版は2015年の『アリス・イン・…

高橋克彦『水壁』

水壁 アテルイを継ぐ男 (講談社文庫)作者:高橋 克彦発売日: 2020/07/15メディア: 文庫 久々に読んだ高橋さんの蝦夷もの。朝廷の圧政に苦しむ東北の蝦夷たちが一致団結、同じく中央に反感を抱く義士たちと手を携えて一矢を報い、たとえ最後には敗れようともそ…

『エルシャダイ原作小説』

エルシャダイ原作小説作者:竹安 佐和記発売日: 2014/04/25メディア: Kindle版 このまえゲームを再プレイした流れで、つい衝動買いしてしまった原作小説。原作と言いつつゲームより後で執筆されてるっぽいんですが、原作とは……?(ツッコミ待ちなのかもしれな…

『寝屋川アビゲイル 黒い貌のアイドル』

寝屋川アビゲイル 黒い貌のアイドル (講談社タイガ) 作者:最東対地 発売日: 2020/07/21 メディア: Kindle版 下僕が「寝屋川、地元やん!」とジャケ買いしてきた小説。何も知らずに読み始めたんですが、話の大枠はミステリ構造になってるとはいえディテールは…

月村了衛『神子上典膳』

神子上典膳 (講談社文庫)作者:月村 了衛発売日: 2015/11/13メディア: 文庫 え、月村さんの剣豪小説あるの? と飛びついたら実は機龍警察より前に書かれた小説とのことで驚きました(それもいいけど機龍警察はやく全部読もうね)。 剣豪ものとしては時代的感性…

五味康祐『剣法奥義』

剣法奥儀 (文春文庫 (335‐2))作者: 五味康祐出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1985/01メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 「柳生庄で見つかった古文書に記されていた各流派の秘技について、小説風に記してみた」から始まる堂々とした大ボラに…

鳥羽亮『柳生三代の鬼謀』柳生一族入門にうってつけの短編連作

柳生三代の鬼謀 (徳間時代小説文庫)作者: 鳥羽亮出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2019/01/11メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 求道の果てに闇へと堕ちた剣聖石舟斎、徳川三代を影から操り神算鬼謀の限りを尽くす柳生但馬守宗矩、地獄から蘇った隻…

Web小説『幻想再帰のアリュージョニスト』を読もう!

これは何? Web小説『幻想再帰のアリュージョニスト』をみんな読んで! 感想も書いて! という、私が勝手に言い出したキャンペーン(キャンペーン?)についてのまとめです。いわゆる実況。非公式です。 (2018/11/07 予備日について追記) やりかた 毎日20時に…

『岳飛伝(四)』

金と南宋が本格的にぶつかりはじめて、本当に『岳飛伝』という感じになってきました。このシリーズになってから出てきた新キャラ・孟遷もすっかり岳家軍の要の一人という感じになっていて、この面子の中に牛坤と姚平がいないのは寂しいなという気持ちになり…

『GDZILLA 怪獣黙示録』

GODZILLA 怪獣黙示録 (角川文庫)作者: 大樹連司(ニトロプラス),虚淵玄(ニトロプラス)出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/10/25メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る『シン・ゴジラ』の襲来から3年後あたりを舞台に、気鋭のルポライターが高…

『パラークシの記憶』

前作『ハローサマー・グッドバイ』からだいぶ先、登場人物が一新されているものの設定的に繋がりのある続編とのこと。前作の内容をおぼろげにしか覚えてなかった私でも問題なく読めたので、細部を覚えている必要はないと思うのですが、前作ラストの大オチを…

長期休暇を機会に腰を据えて脳をやられたい人にオススメのネット作品3つ

前々から興味はあるけど、手をつけるタイミングが見つからなくて先伸ばしになってしまう作品ってありますよね。大作だったり、脳を使いそうだったり、沼からの圧の高まりを感じる作品だったりするとなおさらです。 もしそれがネットからアクセスできる作品な…

『岳飛伝(三)』

岳飛伝というタイトルを見たときはどういうことになるんだろうと思いましたけど、いちおう今のところは梁山泊に比重を置いた話が進んでますね。ただ梁山泊の人間が岳家軍など別勢力に片足を突っ込んだり、交流を持ったりもしていて、国のかたちが少しずつ柔…

北方謙三『岳飛伝(二)』

ようやく聚義庁に集合し、揚令亡き後の梁山泊について語り合う面々。そのメンバーに初代水滸伝の一〇八星がもう数人しか残っていないことに気付き、彼らのほとんどが死んでしまったのだと改めて思い知らされました。物語当初から作中でも数十年が経過してい…

『ヒュレーの海』

新発見の粒子的なやつでVR技術がめちゃくちゃ発達して現実そのものが物理層と論理層で構成されたネットワークみたいになってる未来、なんかのバグで情報強度が拡散して溢れた混沌の海に呑まれた地球圏は7体の超高度AIを核とする7つの国家によって再統合され…

『岳飛伝(一)』

長かった文庫化待ち……。また数年空いちゃったので詳しく覚えていない登場人物も多いんですが、文章があまりにも肌に合うので立ち止まることもなくすらすら読めてしまいました。「これで死ぬような奴ならそこまでだ」みたいなシーンがバンバン出てくるマッチ…

異世界/転生ものの視点から紹介する『幻想再帰のアリュージョニスト』

このところ、なろう小説の異世界(転生)ものに関連する話題を立て続けに見る機会がありました。ほんの数年という短い期間で大量のお約束と類型が形成され、あえてその型を外して意表を突く作品が生まれ、さらに新たな型が生まれ……というスピーディーなサイク…

酩酊感で目玉グルグルになる荒唐無稽言語SF『月世界小説』を読んだアリュージョニスト読者の感想

なんかこう、なろう小説読めない病患者である俺が勝手に想像していた「アリュージョニスト」にけっこう近いような気がするので、「アリュージョニスト」を読んでる人は是非、「月世界」を読んで、同じなのか違うのか、違うならどう違うかを解説していただき…

本日発売の『このWeb小説がすごい!』にレビュー記事を書かせていただきましたの報告

このWeb小説がすごい!作者: ,『このライトノベルがすごい!』編集部出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2015/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る というわけで、本日発売の『このWeb小説がすごい!』のBest10にランクインした『幻想再帰の…

『幻想再帰のアリュージョニスト』がどんな小説なのか改めて説明するよ

『幻想再帰のアリュージョニスト』 はい、タイトル通りです。2014年4月1日の連載開始以来、少しずつ熱狂的なファンを増やしつつある最近のWeb小説『幻想再帰のアリュージョニスト』ですが、残念ながらその人気はまだまだ小規模です。観測範囲でたまに話題に…

神話、引喩、オカルトパンク。一部で妙に評価が高いWeb小説『幻想再帰のアリュージョニスト』とは

『幻想再帰のアリュージョニスト』 この小説が面白すぎてもう辛抱堪らなくなったので(エア)ステマ*1です。 異世界転生保険とは契約者本人を受取人として、保険量である新たな人生を給付する制度である。 身の程を知らない、馬鹿な思いつき――そのような予断に…

『WORLD WAR Z』

戦争記録インタビュー集という体裁のモキュメンタリーなのですが、タイトルは第Z次世界大戦とかゾンビ世界大戦と訳すそうで、要は世界的なゾンビ・パンデミックによる大パニックで壊滅状態に陥った人類が体勢を立て直し、反撃に打って出て見事ゾンビ鎮圧にい…

完結した物語にひび割れを入れる「アフター」として - 『ひぐらしのなく頃に礼 賽殺し編』

星海社文庫版で再読しました。後日談である本作は終始内省的な展開が続くので、動きのある派手なシーンが少ない(=BGMや効果音等のゲーム演出がなくてもさほど表現が弱まらない)点で、シリーズの中でも特に小説向きの内容と思われます。お話としても一話で完…

柳生十兵衛朝鮮に渡る(いつも通り) - 荒山徹『柳生大戦争』

何を言ってるのかよく分からない記事タイトルですが、荒山先生的にはいつも通りの展開なのでお察しいただければ幸いです。とはいえ本作を最後にこの手のネタを封印されるそうなので、荒山先生の朝鮮柳生モノとしてはいちおうの最終作ということになるようで…

文脈をいじくりたおす - 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(下)』

面白かったー!「文脈によって真相がどんどん後付けされていく」という体裁で書かれている本作ですけれど、最終的にあらゆる伏線が収束していったことを踏まえると、舞城さん自身はかなり計算ずくで長期的に伏線を制御していたとしか思えません。もしこれを…

批評するより感想書くのが難しい類の小説 - 舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(中)』

わけ分かんないけど、わけ分かんないにもかかわらずたしかに面白い、でもその面白さの理由がわかんない……っという混乱に陥りつつも、その混乱に追い立てられるように一気読み。「批評は感想より難しい」*1というのが一般的な感覚*2かとは思うのですが、少な…