『しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World』

しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World (富士見ミステリー文庫)
基本的には前作である『しずるさんと偏屈な死者たち』と同じテイストが続いており、上遠野さんの作品によく見られる衒学的な雰囲気がかなり色濃く抽出されたお話です。衒学的というのはこの場合ほめ言葉のつもりですが、人によって大きく好き嫌いが別れるところでもあるでしょうね。しずるさんとよーちゃんの会話も相変わらずほほえましく、前作が問題なかった方なら安心して読むことができるでしょう。ところでオビに「しずるさん大推理! よーちゃん大活躍の巻」と書かれてありましたが、しずるさんの大推理はともかくよーちゃんの大活躍というのは大いに首を傾げさせられます。おそらく大活躍と聞いて期待されるようなことは何もないので悪しからず……。
二章の『しずるさんと七倍の呪い』は森博嗣さんを強く連想させられるお話でした。決して七のあれのせいだけではなくて、お話の底のほうで示されている主張が普段の森さんの主張と一致していたように思えます。四章の『しずるさんと凍結鳥人』は、タイトルからして既になかば飛びかったようなネーミングセンスです。しかし最後まで読んでみると、ことの真相とも相まってこの大昔の特撮のようなノリのタイトルがなかなか似合っているように思えたので不思議です。ある意味ではこれが一番ミステリー作品っぽい雰囲気をかもし出しているかもしれません……実際にミステリーかどうかはともかくとして。ええ、こういうのは好きですよ。でもこのシリーズの一番の謎は、やっぱりしずるさんの病気の正体やよーちゃんの姓についてのあれこれでしょう。以前、どこかで「よーちゃんは銭形警部の子孫だ」という説が出ていましたが、はて……。