『推定少女』

推定少女 (ファミ通文庫)
もう何を言っても野暮になってしまう気がします。ストーリーを演出するための世界観ではなくて、世界観を演出するためにストーリーがあると考えれば、この投げっぱなしのラストもこれで良かったのだと思います。万人に納得されるやり方ではありませんけど、書いている本人にとってはそんなの些細なことですし。
大人と子供が対比されているのは一目瞭然なのですが、では双方がどういう立場で描かれているのかというと、これがよく分からなくて不思議な感じです。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』とは違って大人はかなり直接的な悪役として描かれてますけど、だからといって子供が善だなんていう主張ももちろんありません。それにしても、あたりまえのことですけどこのお話を書いた桜庭さん本人は大人なんですね。読んでいる間はそのことをすっかり忘れていて、まるで本当に15歳の女の子の文章を見ているような気になっていました。
でもBlogなどで自分の読んだ本について言及している人というのはほとんどが高校生以上の年齢で、本書について当の思春期まっさかりの子供たちの感想を見る機会って実は意外と少ないようです。私には主人公の思いのひとつひとつがとてもリアルに感じられたんですけど、他の同年代の人がこの本をどう思っているのかも興味のあるところです。
ところでわけあって今読まされている山本直樹さんの『安住の地』に、「現代のジャンヌダルク」というフレーズが出てきました……。