『天を衝く(2)』

天を衝く(2) (講談社文庫)

長牛友義さんは和みキャラだと確信した昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。

陸奥三部作の第三弾「秀吉に喧嘩を売った男 九戸政実」の二巻です。信長が死んで秀吉の世となり、東北では大浦為信や伊達政宗があれしてこれしてというあたり。後半からは秀吉さんや政宗さんの動向も語られるようになりますけど、お話の中心はやっぱり南部とその周辺です。相変わらずの内輪揉めでやってることは前巻とあまり変わりませんけど、そろそろ事態が大きく動き出しそうな予感も感じさせつつ「三巻へ続く」です。

面白いです。面白いんですけど、高橋さんの作品はどこがどう面白いのか考え出すと答えに窮してしまいます。文体はとても平凡で凝った言い回しなんてぜんぜんなく、かといってその平易さが売りというわけでもありません。構成も普通で、伏線らしい伏線もあまりありません。(逆にここで思わせぶりにこういう記述をしたのは結局なんだったんだ、と思う場面は多々あります) 「ちゃんとキャラクターを作れば後は勝手に話が出来あがる」タイプで、「あるとき突然筆が止まらなくなって驚いた。誰々の霊が乗り移ったのかもしれない」みたいなことを素で言っちゃう人なので、いわゆる物語論なんかもきっと全然気にしていないでしょう。

つまりええと、技術的な面で上手いと思えるところが驚くほど見つからないのです。何か散々なこと言っちゃいましたけど、それでも読んでみるとちゃんと面白いし、先が気になるのでついつい一気読みしたくなります。あんまり書き分けはされてはいないはずの登場人物も、なぜかやたらと格好良かったりします。不思議な魅力というか、もうこの人の書くものは何が何やら分かりません。