『天を衝く(3)』

天を衝く(3) (講談社文庫)

蝦夷ばんざい。

蝦夷礼賛小説最終巻。祖先は源氏・心は蝦夷九戸政実さん大暴れ。一巻二巻が内輪揉めばかりだった分、それを気にしないでいい状況になった当巻の熱いこと熱いこと。九戸党側の人間は一人残らず格好良いし、敵方の武将にもようやく見所のある人物がぽつぽつと。ここに来て高橋さんの本領が発揮されてきた感じですね。実に良いです。壮絶、熱烈。

味方の武将が美化されすぎ、敵方の人物が愚劣に描かれすぎという向きもあるでしょうけど、その辺りはもう高橋さんの作風ということで。完全なオリジナルのフィクションでは滅多にあからさまな悪役を登場させないのに、歴史ものになると途端に勧善懲悪になるというのが高橋さんの作品の妙な特徴です。それは歴史小説というある意味ノンフィクションなジャンルとしてどうなのよという気もしないでもありませんけど、実際内容が素晴らしいですからね……。