『ファウストVol.5』
今さらですけど読みましたよーと。読んだの自体はかなり前なので随所がうろ覚えですよーと。
『アウトランドスの戀』
『ポルシェ式ヤークト・ティーガー』上遠野浩平
これはいい作品。最近の上遠野さんの中でもかなり上位に入ってくる出来じゃないでしょうか。雰囲気としては『夜明けのブギーポップ』なんかと近かったような気がします。特に後編、琥依さんの淡々とした悲しみの情景ははちょっと昔の上遠野さんを思い出させるものでした。カミールさんとかピジョンさんとか。
巻頭のカラーページはさすがウエダハジメさん、すごい味が出ています。ていうかP33とP55の挿絵の違いは……。
『ひぐらしのなく頃に』特集
素晴らしいです。このインタビュー単体に1000円くらい払ってもいいくらい。
ネーミング自体は非常にアレですけど、竜騎士07さんの言う「四次元世界」というのはとても重要な概念だと思います。ミステリーと呼ばれるジャンルができて何十年経つのかは知りませんけど、その歴史の中でミステリーは「トリック」「犯人」「動機」といったキーワードがないと語れないくらいに固定されてきました。けれど、竜騎士07さんは元々ミステリーを読むような人ではありません。そういう意味ではトリックとか探偵とかノックスの十戒とか、その手のミステリーの呪縛にまったく毒されていない人と言えるんでしょう。
一般的なミステリーは謎を作品の重要な「要素」として最初に作り、伏線や謎解きという形で物語の中に配置しているのだと思います。けれどこれは竜騎士さんの作品の作り方と根本から違っていて、この人はそもそも謎を「要素」として見ていません。竜騎士さんの言うところの「四次元世界」を好きなところで切ると平面が現れるわけですけど、この平面だけを見ても当然この世界観の全貌は分かりません。裏にあるものを伏せたまま登場人物にこの平面だけを見せてあげれば、プレイヤーはそこにあるものを勝手に「謎」と見なしてくれます。ここで切る場所と角度を変えれば前とはまったく違った平面が現れるわけですから、結局これは「謎の作り方」の問題ではなく「世界の切り方」の問題になってきます。
ここには(結果だけを見ればそういう風に見えたとしても)「トリック」とか「犯人」、「動機」といったミステリー特有の概念そのものが存在しませんし、プレイヤーの視点からしてもそういう見方をしている内はきっとこの世界観を看破することはできないでしょう。対談相手の奈須きのこさんが、これは犯人当てゲームじゃなくて雛見沢という現象を観測するお話だ、みたいなことをおっしゃってましたけど、まったくその通りなのだと思います。
『私のひょろひょろお兄ちゃん』
『対ロボット戦争の前夜』
『ナオミに捧ぐ 愛も汚辱の内に』佐藤友哉
あれれ、あんまり赤黒くない。むしろ爽やかですよ? いえ、これの作品群を表面上の印象どおり爽やかと呼ぶのには多分の問題があるのだとは思います。でもそれにしても、これだけ赤黒くぐろぐろととぐろ巻いてそうな世界観をこいう風に綺麗に静かに描いてしまうというのは、やっぱり凄い気がします。ますます『フリッカー式』とか『クリスマス・テロル』を読んでみたくなりましたけど、文庫しか買わない星人からやって来た私にはなかなかその機会がありません。