『ゆびさきミルクティー(1)』

ゆびさきミルクティー 1 (ジェッツコミックス)
ようやく読みました。これは凄い。狂ってます。
しょっちゅう下着が見えたり胸が見えたりするので、一見すると「そういう漫画」とも思えますけど、よく見ると明らかに何かがズレています。文法が違うというか、入力に対する出力がありえません。どう考えても一歩引くべきところで、どうしてこの人は躊躇もなく真顔でずんずん踏み込んでくるんですか。あの状況で「口ふさぐ」って、どうしてそうなりますか。最初の方の「おっぱい」のシーンだって、男の子向けの読者サービスとは別の何か超越的な動機の存在を疑わずにはいられません。
アレっぷりの衝撃が強すぎて思わず見逃しそうになりましたけど、まっとうな恋愛ものとしていい仕事をしてますね。主人公をとりまく環境(つまり女の子から好意を持たれている状況)がご都合主義という意見もあるみたいですけど、それはあくまでお話を始めるための初期条件にしか過ぎなくて、お話自体が男の子の都合のいいように展開していく種のラブコメとは一線を画しています。恋愛ものを「主人公がヒロインと結ばれるまでの過程」を描くものと「恋愛の模様そのもの」を描くものとに分けるなら、これは間違いなく後者に属する作品です。告白とかキスのような「ゴール」的なイベントがないままものすごく何気ないシーンでフッと終わってしまう短編なんかを見ていても、この人が何を描こうとしているのかなんとなく感じられます。