『くノ一忍法帖』山田風太郎
はい、読みました。甲賀忍法帖でも柳生忍法帖でも魔界転生でもなく、どうしてこれから読もうとしたのかはよく分かりません。何者かからの良くない電波が作用したんだと思います。
それでええと、何ですかこれは。山風さんは頭の中に宇宙蟲の一匹や二匹飼っていたのかもしれません。なんとなくアクエリオンと同じ方向性を感じました。甲賀忍法帖がアクエリオンの裏番組なのも頷けます。でもこっちはアクエリオンの七倍くらいえげつないと思います。
大雑把に言うと、五人のくノ一が豊臣家の落とし胤を身篭っていることが判明したので、将軍家康に命じられた五人の伊賀忍者が胎児もろともこれを殺害しにいく、というお話。なにせ物語の軸が赤子殺しですから、前提からして相当に凄惨です。さらにこの伊賀鍔隠れ衆というのが揃いも揃って最低のゲス揃いで、ビジネスライクに標的を殺して行くだけならまだしも、女性を陥れては死ぬ前におぬしにも少しいい目を見させてやろうーとかぬかしてなんか色々するのです。バジリスクの薬師寺天膳が五人に増えたようなものです。外道戦隊ゲスレンジャーです。チャクラは禁欲の果てに練成されるという話はどこに行ったんですか?
伊賀忍者は得意の助平忍法でくノ一をかどかわそうとしますが、そこはくノ一、こちらも負けじとかどかわし返します。はい泥沼。もう無茶苦茶です。忍法「筒涸らし」とか忍法「天女貝」とか、名前を聞いただけでも凄みを感じますけど具体的にはイメージしたくありません。忍法「夢幻泡影」なんてどこのリミットブレイクですか。ネタ紙一重というかネタそのものなんですけど、登場人物と文章は大真面目です。アクエリオンだってよくあれだけ馬鹿げたことを大真面目にやれるものだと思いますけど、こちらはさらに輪をかけて大真面目。アクエリオンはスタッフがネタに自覚的なのが見てて分かるんですけど、こちらは山風さんが本気なのか冗談なのか文章から読み取れないのです。なんていうか許してください。