『終わりのクロニクル(5)下』川上稔

終わりのクロニクル 5(下) AHEADシリーズ (電撃文庫)
わんわん。
というわけで580ページです。500ページに届く届かないで騒いでいた頃が、いまや遠い昔のように思えますね。怖い怖い。
何度もほのめかされていた通り、流水御大も驚きの真相が明らかになりました。びっくらこきー。あんなこと聞かされちゃったら、それは熱田さんもレイパー呼ばわりされるでしょう。思い返してみると、直接的なヒントはないにしても主要キャラクターの名前や新庄さんの姓の謎など、伏線もあるにはあったんですね。それはそうとハジ父さんの腰を前方に反らすようなあの格好はどこぞの変態さんに限りなく漸近してると思います。
相も変わらず、登場人物がどこまでも前向きで熱いんですけど、この前向きさはある意味では川上さんの作品の最大の弱点という気もします。川上さんの作品世界では、たとえどれほど絶望的な事態に陥ったとしても登場人物は最後まで必死に抵抗し、最終的には状況を打破してハッピーエンドを迎えます。中には闘いの途中で力尽きる人もいますが、彼らの意志は本人やその仲間たち、または物語自体によって必ず肯定されます。それは読んでいてとても気持ちのいいことなんですけど、その反面、「すべての問題が最終的には前向きに解決される」ことがメタレベルではじめから決まっているとも言えます。
もちろん、ライトノベルに限らずとも「最終的に主人公側が勝利する」という構図のバトルもの作品は九割を軽く超えるでしょうから、それ自体は何も珍しいことではありません。ただ川上さんの場合はその前向きな姿勢があまりにも確固としていて、「もしかしたら何か悪いことが起こるかも」というある種の不確実さに対する緊張を作品からほとんど感じないのです。彼はプロットを徹底的に完成させてから本編を書き始める人なので、そういった構成の隙のなさも読者に不確実性を感じさせない原因なのかもしれません。単なるご都合主義とはわけが違いますし、作品世界がしっかりしすぎているが故の悩みというのも贅沢な話なんですけど。