『ヒトナツの夢』 (猫)milk cat

http://milkcat.jp/introduction/hitonatu/index.htm
美少女ゲームって何よ? とということで、フリーゲームで取っ付きやすく、なおかつ評判も良いこの作品から手を伸ばしてみました。ふむー。作者自身がKey作品を意識しているらしく、たしかに『A I R*1なんかと似た方向性を目指しているように感じました。(例の飲み物は序盤で強調された割にあまり物語にもキャラクター描写にも貢献してませんでしたけど、これも「どろり濃厚ピーチ味」を意識した単なるネタということでいいのでしょうか?)
後半から脇役だと思っていたサブヒロインがお話の中心になり、ヒロインをミスリードさせるとは豪快だなあと感心していたら、ラストに「エンディング2 誰々エンド」という文字が出て愕然。そうでした、選択肢によってヒロインが変化するのがこの手のゲームのシステムなのでした。その他、いくつか「このあからさまにアレなアレはアレへのミスリードで、真相はきっとアレに違いない!」と思ったところがありましたけど、すべてミスリードでも何でもなくそのまま。ミステリー脳って怖いですね。
全体としては"ちょっといい話"という感想。決して悪い印象はありませんけれど、上手い作家なら二、三十ページほどの短編で表現できる世界でもあります。一プレイに数時間かかり、本のようにどこでもプレイできるわけでもないので、ちょっと手軽には手を出しにくいように感じました。やはり前半の、主人公とヒロインの日常的な絡みが長すぎて余分であるように思えてしまうんですけれど、美少女ゲーム的にはこの絡み自体に需要があるということなのかもしれません。
少し前に美少女ゲームの中の恋愛についての話題がありましたけど、この作品を見た限りではたしかに、「こんなのは恋愛じゃない」という意見の人がいたとしても反論は出来ません。この作品ではヒロインの主人公への親近感や好意は、そのまま恋愛感情とイコールになっています。主人公はヒロインに対して友達や家族にそうするのと同じように優しく親しく接していれば、それだけでヒロインとの恋愛関係を築いていることになるのです。ここには恋愛に本来あるべき縦軸横軸z軸はなく、ただ「好き⇔嫌い」という一次元の軸があるだけです。そしてこの傾向は、きっとその他のほとんどの作品についても言える傾向なのでしょう。もちろん、製作側だってヒロインに「あなたのことは友人としてとっても好きだけどそういう目で見られてたなんてショックだわ。*んじゃえ」なんて言わせたいわけじゃないでしょうから、ユーザーがこのジャンルの作品に求めていることを考えると、これが至極まっとうなシステムなのだとは思います。

*1:私がここでやたらと『A I R』ばかり引き合いに出すのは、それが今までに私がプレイした唯一の美少女ゲームだからです。他は知りません。