カミュ『異邦人』

異邦人 (新潮文庫)
太陽のばかやろー。いえもとい。
えっと、とっても面白かったです。前半はよく分からない性格をした主人公の生活の描写が淡々としていて、一体これからどういうお話になるなのかさっぱり読めなかったんですけど、後半になってそれまでの不思議な描写の意味が分かった途端、俄然引き込まれました。

展開として見れば、「人とは感性の異なる人物が、普通の人から気持ち悪がられて迫害される不条理を描いた話」と取ることもできるんでしょうけど、主人公の造型と思想自体がたいへん興味深かったです。

赤緑黒白』を読んだ直後なので余計にそう感じるのでしょうか、こういうことを言うとまた頭悪そうに見えるかもしれませんけど、主人公の言動からは森博嗣さんや西尾維新さんの作品から感じるある種の「孤独=自由」という発想を強く連想しました。人々は同じ感情を共有しているわけではなくて、せいぜい同じ言葉を使うことで同じものを感じていると錯覚しているに過ぎないんだよー、*1みたいな。

こういった感覚が戦前から既に提示されていたことに驚いたり、人間の頭の中の普遍に納得したり。そういうわけで、本書が「人間的感情の欠落した主人公の不条理な思考」とか、逆に「主人公は十分人間的な感情を持ち合わせているけれど、周囲からはそういう風に見えないだけだ」なんていう風に評されているのを見ると、頭の奥の方がちょっとむずむずしたりしました。

*1:うーん、この表現も何だか違う気がします。