『ファウストvol.6 SIDE-A』

すずめばちがサヨナラというとき上遠野浩平

合成人間の哀しみ。前作もそうでしたけど、はじめから抗いようのないシステムに属する人々を書くのがとっても上手いですね。ケーキ→ぬいぐるみとエスカレートする舞惟さんの思考が痛々しすぎます。しかも片目。


『窓に吹く風』乙一

あいたー。高橋さんの変わりようが妙にリアルであいたー。松田さんがクラスの人気者からエイリアンに転落する理由も説得力十分。人々はこうやって日に照らされた道を踏み外していくのでした。ぎゃあー。乙一さんの作品に出てくる人ってたいては「既に踏み外してしまった人」なので、そこに至までの過程が描かれるのは新鮮でした。


『憂い男』『愛らしき目もと口は緑』『レディ』佐藤友哉

すごく面白い。すごく面白いんですけど、こんなのどうやって感想書けと。早く佐藤さんの長編を読んでみたいので、速やかな文庫化をお願いします講談社さん。


『さらなる世界の最先端へ!』東浩紀流水三号+清涼院流水+佐藤友哉+西尾維新

書評右翼な東さんとJさんが「〜とは〜であるべきだ」的主張を唱え、書評左翼の佐藤さんと西尾さんが苦笑いしながらそれを眺めて、獣人毒者の御大が文SHOWを展開して腰を折る、という見事な三位一体の構図が完成していました。(なにそれ) いえ、御大がわりと普通に日本語*1を喋れていたのでびっくりしました。ていうかときどき仕切ってましたし。
清涼院さんが、自分と西尾さんの言葉遊びは中国語への翻訳に有利みたいなことを言ってましたけど、西尾さんの方は実はそうでもないんじゃないかな、と読みながら思いました。清涼院さんは言葉を字面の並びとしてかなり記号的に見ているので、同じ漢字圏として訳は有利かもしれません。けれど西尾さんは言葉の辞書的な機能を越えた印象やその組み合わせまで意識して文章を書かれているので、同じ単語の日中での些細なニュアンスの違いが逆に障害になることもあるような。まあそれでも、英語みたいなぜんぜん異なる言語に訳すよりは簡単なのかもしれませんけど。

*1:あれ? ラー言語でしたっけ?