『ブラッド ザ・ラストヴァンパイア 2000』

BLOOD―The last vampire 2000 (角川コミックス・エース)
BLOOD+』も見ているには見てますが、それよりも玉置勉強さんの漫画ということで購入。いえもうむちゃくちゃですね。玉置さんの作品としては違和感ありませんけど、夕方にTVで放送されている『BLOOD+』とは似ても似つきません。『ガンダムSEED』と『バジリスク甲賀忍法帖』くらい違います。
どうやらこのシリーズは作品ごとにパラレルな配置にあるようで、翼手とか小夜さんの基本設定以外は時代から世界背景まで独立したお話になっているようです。ベトナム戦争とか小夜さんの家族とかは出てきませんし、表面上の敵は米軍じゃなくて巷の暴走族ですし。けれどそれよりも目立つのは、もっと本質的なところでの作品性の違いです。TV版*1の方は、ある種の残酷描写に目を顰める人がいるものの基本的には反戦や家族愛がテーマの一般的な道徳規範に忠実な内容です。けれどこちらは、まあ、『東京赤ずきん』の玉置勉強さんが描いていることからも自明な通り、モラルのかけらもあったものじゃありません。家族もクラスメイトもその他の人間も、目に付いたらとりあえず一回くらい殺しといた方がいいよねという絶望系的精神性です。
東京赤ずきん』と比べると残酷描写はそれほどでもありませんけど、女の子が徐々に壊れていったりする病的世界は十分に濃厚です。けれど主人公である小夜さんの言動から分かる通り、少なくとも諦めは肯定されていません。頽廃的で救いも希望もないけれど、強靭な意志と力があればまあいいじゃんっていう。

*1:映画版は見てません。こちらはこちらで、TV版とは似ても似つかない内容なのだとは思います。