『ファウストvol6 SIDE-B』

『怪談と踊ろう、そしてあなたは階段で踊る』竜騎士07

竜騎士07さんは普段ミステリーなんてまったく読まない*1人なので、それに関する素養というものはぜんぜんありません。そのため『ひぐらしのなく頃に』はミステリーの歴史とか技巧・常識に影響を受けていない、非常に原型的で逆に革新的な作品になっています。ひぐらしには『密室』や『探偵』による謎解きはおろか、『犯人』や『トリック』の概念すら必要ないのです。
で、ファウストの本作ですけど、うーん。誌面を気にして、むりに"ミステリー"を書こうとしてしまった印象はありました。ある程度既存ミステリーのお約束に沿ってお話が作られているので、そういう視点で見るとやっぱり凡庸な印象が否めません。途中で主人公が謎解きしようと頑張ってあれこれ考えるんですけど、そういう"いわゆるミステリー"なことを真正面からやろうとしてしまうと、やっぱりロジカルな面での甘さが目立ってしまいます。
もうひとつ気になるのは、キャラクターの掘り下げの弱さ。ひぐらしのキャラクターにはすごく確固とした身体性が備わっていて、このキャラクターの24時間を省略せずに書けと言われれば普通に書いてしまえるんじゃないかと思えるほどです。それと比べると今作のキャラクターは、ストーリに沿って行動する駒にしか見えません。おそらくキャラクターを考える余裕がなかったということなんでしょうけれど、これは残念。その中で刑事の優花おばさんだけ妙にキャラが立ってましたけど、やっぱり美少女ゲーム作家のプライドですか。
最後のアレについて。ファウストという紙面的にこれどうよと思いましたけど、まあ笑えたしいいんじゃないかと思います。空気読めないところが竜騎士さんの魅力ですしね! いえ、正直こういう所のバランス感覚が、竜騎士さんのいちばんの弱点なのだとは思います。いわゆる悪ノリ。でもこういう面がないと、きっと『**し編』も生まれなかったわけで……。あ、ひぐらし本編では今のところこういうのはあんまりないので、未プレイの人が「竜騎士07ってこういう作家か」と引いていないことを祈ります。

*1:小説自体読まない人ですし。あれ? でも横溝正史さんは読まれてる?