『サイレン』

さて、観てきましたよ。堤さんの作品は『TRICK』と『溺れる魚』しか観たことがなかったので、ギャグ抜きの展開がいろいろ新鮮。それにしても、この人は不気味な田舎町を嫌な感じに描写するのが本当に好きですね。村人が変な儀式に集まってるシーンなんかは本当に気持ち悪いんですけど、堤さんの作品と知っているせいで微妙にギャグっぽく見えてしまいました。
それにしても、布とか紙切れを何枚も高い所にぶら下げておくだけで、どうしてあんなに不気味に感じてしまうんでしょう? 呪術的というか。いちばん怖かったのは絵本の中に描かれていた女の子の絵で、これは本当に生理的な畏怖を感じてしまいます。きっとあの独特の昔風のタッチのせいで、幼児がときどき信じられないくらい怖い絵を描いてしまうのと似た原理なのだと思います。
後半の展開、特にサイレンの真相については、これはこれで堤さんらしいなあというか。少なくとも予想はしていなかったので、意外は意外。伏線がいろいろ投げっぱなしで整合性に納得いかないところが多々ありますけど、その未収束さが「ここで明かされた真相は本当に真相そのものだったのか?」という気持ち悪さを残す効果はあったと思います。(それを狙っているのなら、もっとうまく突き詰められただろうとも思いますけど) ただ、ラストのオチにはやられたと思いました。今回は映画館で観てたので逃げ出したくなるほど怖いという感想は抱かなかったんですけど、もし夜中に自分一人で観ていたとしたら、多分途中で電源切って逃げてたと思います。*1

*1:追記。とはいえそれは変なオブジェとか絵本に対するものであって、お話そのものに対する恐怖ではないんですけど。