総括

交響詩篇エウレカセブン 10 [DVD]
うわわーわ。なんつう荒唐無稽な最終回ですか。見てる間は伏線回収よりも勢いを重視した投げっぱなしのように思えてたんですけど、後になって考えてみると意外と取りこぼしなくまとまっていたのが意外でした。とはいえ、説明不足なのは間違いないのでよく分からない点は依然として多いんですけど。
一回一回の放送だけに注視するなら、違和感なく優れた作品だったと思います。音楽へのこだわりやネーミングの微妙さは一昔前のダサカッコよさをうまく匂わせられていたと思いますし、「格好悪いけど必死な大人」であるホランドさんの造型にも上手くマッチしていました。当然絵や動きの表現も一級。こういった大作アニメをまともに見るのは初めてだったんですけど、さすがに気合いが入っているなあと。
けれど、それこそ大作として一年ものという長いスパンで見たとき、決して上手い構成だったとはいえないと思います。最初の数話くらいなら、世界観やとりあえずのストーリーラインが提示されなくても視聴者は付いてこられるでしょう。けれど、第一期が終わってもまだ「この世界の一般人が認識しているレベルの基本的世界観」(たとえば「海がない」とか)が明らかにされず、「主人公たちが戦っている理由も判然としない」というのはさすがにどんなものなのかなと。何かの効果を狙って確信犯的に情報を制限していたのかもしれませんけど、この場合は単に視聴者に置いてけぼり感を味あわせただけだった気がします。また話が変わると同じ登場人物の心理描写に違和感を感じてしまうことも多く、全体的視点から見た統一が欠けていた気がします。こういった構成のアンバランスさは、やはり第二期に延々と続いた欝展開に顕著。この辺の問題は、大人数による製作であるゆえに作品全てを俯瞰的に眺める視点を誰も持てなかったことが一因でしょう。作品の部分部分がばらばらに乖離しているような違和感は、同じく大作である『BLOOD+』や『ゼノサーガ』からも感じます。その点、あれだけの人員をつぎ込んでおきながらちゃんとひとつの世界として統一感されていたFF12はさすがというか、まあ河津神さまの「全ての現場に自分の目が届いていないと気持ちが悪い」という方針のおかげなのだと思います。
とはいえ一年間、日曜日を楽しみに待つことのできた作品でした。レントンくんの捻くれたところのない良い意味での子供らしさは、中二病に蝕まれた心に響きまくりましたし。最初の頃のエウレカさんはどう見ても「不思議に大人びたお姉さん」といった感じだったのに、第二期ラストあたりからはレントンくんの方が年上に見えるようなっていたりして、彼の真っ直ぐな成長っぷりが見事に表現されていたと思います。あの最終回はまあ思いっきり若気の至りというか見ていてものすごく恥ずかしかったんですけれど、この作品の序盤の魅力だったレントンくんの青臭さが再び全開になっていてたいへん気持ちがよかったです。小二病万歳! 中二病から立ち直るもっともよい方法は、もう一度小二病の頃の感性を思い出すことだと最近確信しつつあります。でもこの作品で最も深く印象に残ったのは、やっぱり例のエウレカキックでした。