『円環少女(1) バベル再臨』

円環少女 (角川スニーカー文庫)
裸人飛行機! 裸人飛行機!
裸人飛行機の人がステキ過ぎました。ものっすごいインパクト。なにせ空飛ぶ変態です。エアダイバーです。ジャック・ラカンさんも真っ青ですよ! 惜しむらくは、出番があまりにも少なすぎたこと。どうして彼をレギュラー級の扱いにしなかったのか、長谷さんの判断を疑います。鬼畜外道揃いな刻印魔術師の中にあって数少ない信頼できる人間だという描写もありましたし、かなりおいしい脇役になれると思うんですけど。うーん、残念。
あー、あと内容。えっと、とても面白かったです。文章は読みにくいと言えばたしかにそうなんですけれど、単純に下手というよりも文体への拘りが裏目に出ている様子。子供であろうと死ぬときは普通に死んでしまう容赦のない雰囲気は非常に好ましく、どうしたって偽善者以外にはなれない格好悪い大人たちの立場を思うとやるせない気分になります。後味は、悪いというより苦かったです。
でも、できればもうひと越え欲しかった気持ちも。せっかくこんなに容赦のない世界なんですから、女の子の肉片とかそういうのをもっと遠慮なく撒き散らしてよかったんじゃないかなと。まあこの作品はまだシリーズ一作目なわけですから、ある程度抑えなければいけない部分もあったのでしょう。読んでみた感じ長谷さんもそういうのが好きそうな人っぽいので、今後もっと酷いぐろぐろ展開になることを希望しますよ。肉片肉片。
凝りまくった設定まわりも魅力的なんですけれど、拡大解釈の後出しで戦況がいくらでも覆せてしまうのはちょっと残念でした。一見ひとつのルールに沿って戦闘が行われているようにも見えるんですけれど、魔法で可能なこと/不可能なことの境界線はかなり曖昧。土壇場で放った奥の手の原理をその場で説明しても、読者の視点からは作者の恣意によって勝敗が決められたように思えてしまう気がします。ここで前もって上手く伏線のひとつでも仄めかしておけばかなり違った印象になったと思うので、続巻はそのへん期待したいです。あと裸人。