『順列都市(上)』

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
ディアスポラ』以来、二冊目のイーガンさん。アレを読んだ後ではそれほど難解という印象もなく、細部の詳細なメカニズムはよく分からないにしてもだいたい何をやってるかは理解できました。『ディアスポラ』では人々が当たり前のように人格をコンピューターに移植して走らせてましたけど、要はそういった社会に至る前の過渡期を描いた作品ということでしょうか。アイデンティティの問題に言及している下りでは小林泰三さんの幾つかの短編を連想しますけれど、そこはさすがイーガンさん。重油の汚れも黄色い汁も想起させない、清潔でスマートな印象でした。(あたりまえ)
オートヴァースが魅力的過ぎるんですけど、ここに書いてあることが完全に理解できればもっともっと面白いんでしょうね。下巻では、ここまで描かれてきた諸問題に加えて上巻ラストに明かされた例のアレを中心に据えたお話になるのでしょうか。さっさと下巻買ってきます。