『順列都市(下)』

順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
途中で塵理論の理解がおっつかなくなりましたけど、検索したらうまい具合に解説してくれてるサイトが見つかって万事解決。よくもまあ、こんなこと思いつくものです。ものすごく刺激的な発想なんですけれど、ちょっと実感が湧かなかったのは「人間の脳たりえる十分な思考機能さえ存在すれば、そこには必ず意識と主体が存在する」というこのお話の前提をポンとは受け入れられなかったからかもしれません。もちろんコピーとオリジナルのアイデンティティ問題なんかは丁寧に描かれているんですけど、「そもそもコピーに意識はあるか」という問題ははじめから自明のものして扱われません。この世界では、アトムさんに代表されるような高度な人工知能は問題なく人間の精神と等価に扱われるっぽいです。
詳細な理屈はよほど専門的な知識を持ってないと理解は難しいと思いますけど、塵理論さえ理解できれば文脈からおおよそ何が起こってるかは読み取れると思います。そういう意味で、単に読み通すだけならそれほど難解でもありません。文体自体は平易ですし、細部に拘らずちょっと引っかかる点があってもどんどん先を読んでいける人なら、SF入門書としていい感じかもしれません。塵理論だけちょっと難しいので、上巻を読み終えたあたりで検索かけてみるといいかもしれません。