『電波的な彼女』

電波ー。

主人公は「他人に決して害意を向けない内省限定の中二病」という感じで基本的にすごく好感が持てるんですけれど、序盤でのあの行動だけは生理的に受け入れられませんでした。「追い詰められて正常な思考ができなくなった」ような描写があったならともかく、わりと冷静な頭で計画を立ててる様子でしたし、その後のフォローも特になし。最後に止めに入ったのだって「裏切り」という結果を忌避した結果であって、その行為自体の恐ろしさからではありませんでした。

ここでもし主人公がファウストとかに出てきそうな一種の壊人として描かれていたなら「この人はそういう人間」ということで納得いったんですけれど、なまじ「良識的な普通人」として一貫した描写がされているだけに、この行動には違和感と嫌悪感を覚えまくりました。後の方で似たような別件に対し「自分には関係のない話だが、ジュウはそういったものを見過ごせない性格だった」とか書かれてるんですけど、あんたがそれを言うのかと。

とにかくそこが引っかかって引っかかって仕方なかったんですけど、あとは概ね楽しめました。探偵、助手、犯人、犠牲者、というのが事件ミステリーのスタンダードな配置なわけで、まあこうなるのは仕方ないかなあと。ていうか二巻以降の表紙も微妙にネタばれになってますよね、これ。とりあえずお母さんがいいキャラでした。哀川潤さんとの類似を指摘する感想をいくつか見かけましたけど、流水御大の『とく。』にはもっとそっくりな人が出てましたよ。

そういえば、あとがきが地味に良かったです。なんかこっちまで小説書きたくなるような素敵なエピソード。あとKOO……ああいえ何でもありません。