『春期限定いちごタルト事件』
うーん。『氷菓』でも同じ感想を持ちましたけど、あくまで「推理もの」として見る限りにおいて、米澤さんの作品は私の肌に合わないのかもしれません。推理の過程があまりにもザルというか、冗談としてならともかくこの理屈に疑問なく頷けてしまう人はそのうち詐欺に合ってしまいそうな気がします。作中で小鳩さんが同じようなことを言っていましたけど、七割がた信頼できる推理を四回繋げるとその信頼性は二割五分になるわけで。ココアのお話は仮説を挙げるたびにすぐさま検証という形で進んでいったので無理がなく、なかなか面白く読めたんですけれど、他のエピソードは作中人物の推理内容に合わせて作者が真相を用意してあげているように見えてしまいました。
とはいえ、いわゆる「推理ものっぽい謎」によってカモフラージュされた最大の仕掛けである小佐内さんのアレにはびっくりさせられました。一章、二章のあたりまではただ大人しいだけで面白みのないキャラクターとして描写されている彼女ですけれど、三章あたりからどうも雲行きが怪しくなって、そこから先がすごい破壊力。どちらかというとひぐらしの設定考察のような趣もありますけれど、ミステリーとしてはこっち方面で評価されているのでしょうか。
とりあえず小鳩さんがいい感じにいけ好かない感じで好ましいです。この人も哀川潤さんにぶっ飛ばされて矯正させられるべきキャラクターですね。ところで性格の悪さで言ったら戯言シリーズのいの人の方が明らかに重度なのに、なぜか小鳩さんの方がいけ好かなく思えてしまうのは何故でしょう。よく分かりません。たぶん私だけだと思います