『殺戮にいたる病』

殺戮にいたる病 (講談社文庫)
やーらーれーたー。なんか清涼院流水さんの『コズミック』とか『とく。』を読んだ後のような気分になりました。我孫子さんはあのネタのためだけに三百ページを越える本作を書き上げたわけですけれど、純粋にネタを使うためだけなら別にこんな長文を書く必要はありません。たとえば十数ページの短編でも、同じネタを使うことはできたでしょう。でも我孫子さんは、その前振りにあえて三百ページを費やしたのです。読者はラストシーンまでに三百ページ分の対価を払っているわけで、この対価の大きさにはそのままラストの驚きを増幅させる効果があるのでしょう。これと同じことは流水御大にも言えて、彼の作品の場合は数百ページを読むことで費やした労力と時間がラストのオチの脱力感を増幅させているのです。まあ辛抱した末のご褒美が驚きと脱力じゃあ比較になりませんけどね!
で、まあ例のアレはとにかく素晴らしかったんですけれど、そこまでは「十年前だなあ」と思わずにはいられない描写がそこかしこにありました。さすがにこれで三百ページ引っ張るのは無茶というか、典型的な猟奇殺人犯の描写とそのバックグラウンドには正直古さを感じてしまいました。ていうかせっかくネクロっぽい事件を扱っているのに、肝心な犯行シーンがあんまり萌えないのはどうかとおm(検閲さえれました。変態とか死ねばいいと思います。