『夏期限定トロピカルパフェ事件』

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

甘いです。
たしかに本作最終章のミステリー的仕掛けはよく出来たものですし、それがお話のテーマと直結しているのも見事。物語とミステリー部分の乖離が激しい昨今のジャンル事情からすれば、物語の構造そのものをミステリーとして扱っている本作は賞賛に値するでしょう。今回は前巻と比べて理屈自体には目立った無理もありませんでしたし、米澤さんには今後もこの路線を期待したいと思います。
けれど、この作品をもうひとつの側面から、つまり中二病小説(厳密を期すなら「対中二病小説」と呼ぶべきでしょうか)として捉えるてみるとどうでしょう。現役中二病としてリアルタイムに闘病生活を送っている私の視点からすると、本書はまだまだ「甘い」と言わざるをえません。中二病患者が自らが中二病であることを真正面から突きつけられたときの衝撃は、こんなものではないはずです。それはきっと「恐怖」と形容して何ら過剰ではない感覚で、この作品は残念ながらその域にまでは達していません。これはつまり、作者である米澤さんがまだそこまで恥を捨てきれておらず、自分の中の中二病と向き合えていないということなのでしょう。少なくともこの点に関しては、無自覚とはいえ正真正銘の中二病闘病作家である日日日さんの作品群の方が一歩先を行くはずです。
まあ、本シリーズはまだ二作目が終わったに過ぎません。やりようによっては、ここから先の展開で化けることもありうるでしょう。米澤さんには更なる中二病的脱皮を期待します。

って私の頭の中の中二病蟲が言ってました。蟲の仕業ですな。米澤さんは別に中二病小説とか書いてるつもりはないと思うので、この感想はまったく的外れだと思います。ていうか何様でしょうねこいつ。米澤さん別に中二病じゃないですし。ところでこのシリーズはやたらと「甘い」お菓子が頻出しますけど、これって米澤さんの作品がよく「ほろ苦い」と評されることへの趣向返しなのかなーとか思いました。