『しあわせの理由』

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)
短編集。あらためて思いましたけど、イーガンさんの小説ってものすごく読みやすいですね。ライトノベル並みと言うとさすがに大袈裟でしょうけど、川上稔さんや浅井ラボさんの方が間違いなく難読ではあります。『闇の中へ』『位相夢』あたりはSF設定をある程度理解できてないとお話自体がちんぷんかんぷんになっちゃいますけど、あとはまあ雰囲気で流れには着いてけますし。

二作ほどキリスト教的思想がテーマとなっている作品があって珍しいなあと思ったんですけれど、よく考えたらそれ以外にも全ての作品で新技術による倫理観の変容がテーマとされているんですね。ここまで徹底していたのかと、イーガンさんの方向性を再認識。百年二百年という長いスパンで見るなら、これらの作品は実際の社会に対してもきっと意味を持つことになると思います。

とりあえず『道徳的ウイルス学者』の最後が凄すぎました。まさに論理のアクロバット。ちょうひどい。*んじゃえ。巻頭の『適切な愛』と巻末の『しあわせの理由』はわりと対照的なお話ですね。なぜか両方とも「グローバル保険」の名前が出てきますし。なにも保険会社の名前をクロスオーバーさせなくてもと思いました。