『やみなべの陰謀』

やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

岩手県早池峰山の奥深く、結界に隠れて現代を生きる最後の忍者集団「闇奈部」。彼らは今一度かつての隆盛の時代に返り咲くべく、

とか嘘あらすじでボケようと思って面倒になってやめました。えーと、古語だと「な」には格助詞の「の」あたりと同じ用法があるので、「闇の部門」とかそんな意味になるわけですねちなみに。だから何。だから何。

孤高の天才が遺した、前世紀最後の奇跡

っていうオビを見て思わず「死んでへん死んでへん」と言いそうになって、大阪の恐ろしさを思い知った次第です。まあ魔界神州対応論的にそっちが地なんですけど。

えーと、『ミッションスクール』の最後に載ってたお話もそうでしたけど、田中さんって単に馬鹿馬鹿しいだけじゃなくて物悲しく切ないお話も行けるんですね。ていうか、これだけ荒唐無稽で間抜けでしかも大阪弁まみれの世界にあって、しかもセンチメンタルな感覚が違和感なく同居してしまっている雰囲気は自然すぎて逆に異様。こういう作風の人って他に例を知りません。筒井さんとか?

SF的には、どういう構造になっていたかはほぼ把握できたんですけど、パズルのピースが一気にカチカチはまっていくような感覚を味わうことはできませんでした。何だか靄がかかっているというか、「あそこの真相は大体こんな感じだろう、こっちは多分こういう塩梅だろう」みたいなアバウトな理解が生暖かい気体のようにじんわり巻きついてくる感覚。もうちょっと瞬発力が欲しかったかなと。まあそれはともかく田中さんは頑張って新作書いてください。