『太陽の塔』

太陽の塔 (新潮文庫)

何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。

ルサンチマンに喘ぎ苦しみながら毎日を独り身で生きる京大生たち。悪夢蔓延る忌々しいクリスマスイブのその日、恋愛ファシズムに対して彼らは遂に反乱を起こす!」みたいな。反乱が実行に移されたクライマックスシーンでは、京都四条を舞台にした壮大なスペクタクルが繰り広げられます。(大嘘)

それにしても、この一人称語りは凄いですね。こういうことって、きっと誰もがときどきは考えていることだと思うんです。普通の小説にしたって、こういった無意識の主張は文章の端々に紛れ込んでいるものです。ところが本書では、それが全ての段落の全ての文に渡って行われているわけで、しかも作者さん自身はそのことに自覚的であらねばなりません。この文章を読んで得られる反応は人によって違うはずで、おおよそ笑うか、不愉快になるか、死にそうになるかの三つでしょう。稀に引っかかるべきところで引っかからず自然に読んでしまう人がいるのかもしれませんけど、それはそれで幸せなことなのかなあと思ったりしました。周りには迷惑ですけど。

これのどこがファンタジー? という意見を見かけましたけど、日本ファンタジー大賞の言うファンタジー幻想小説とかそういうのまで含んでいると思うので、そういう意味ではファンタジーかなと。こういった作品の解説を華やかな女優に書かせるのはそれ自体が失敗だ、と言ってる人も多かったですけれど、本上まなみさんという女優がどんな人か知らなかった*1ので、その辺は気にせず読めました。面白い解説だったと思います。です。

*1:名前は聞き覚えありましたけど。