『狼と香辛料』の面白さって『デスノート』と似てません?

狼と香辛料 (電撃文庫)
うーひゃー何これ。すごい面白かったです。これで銀賞? 文章的な粗がないではないので大賞は逃すとしても、金賞でも勿体ないくらいの作品だなーと主観的には思いました。あまりライトノベル的ではないからメインの読者層を獲得できない、とでも編集の人に判断されちゃったんでしょうか。

この作品の面白さはなんなのかと少し考えて、思い当たったのは『デスノート』でした。本書の面白さは、『デスノート』の面白さと同種のものだと思います。あちらは「デスノート」というルールの下で登場人物が互いに相手の裏を掻き合うわけですけれど、本書の場合は「経済」というルールに沿って同じことが行われています。まあ『デスノート』みたいに次から次へと新展開が連続するというわけでもないんですけれど、読み合いの末に妙策で相手を出し抜くカタルシスはやっぱり気持ちのいいものです。

似たような化かし合いは、主人公のロレンスさんとヒロインであるホロさんの間でも行われています。この場合は、いかに相手の心の機微を読んでお互いをおちょくり合うかという、ちょっとした恋愛ゲームのような微笑ましい駆け引きなんですけれど。こういったやり取りはキャラクターの魅力を表現することにも直結していて、実によい感じに作用していました。

この作品の性質上、シリーズが続いている間は主人公ロレンスさんが行商人をやめることはできず、定住して自分の店を持つという夢は叶いそうにないんですけれど、その辺は一体どうなるんでしょう。まあ、ホロさんが故郷に辿り着いた時点でシリーズも完結しそうな感じなので、長期化ということはないだろうと思いますけど。