『ゾンビ屋れい子(5) イーヒン編』
スタンドの代わりにゾンビを操つる脳髄どろぐちゃスプラッタ漫画の第五巻。
本シリーズは主人公が「ゾンビ屋」稼業で遭遇する様々な事件を描くオムニバス短編パートと、悪しき「ゾンビ使い」たちとの戦いを描くストーリー長編パートに分かれています。そして本書では、まるまる一冊が後者のストーリーパートに当てられています。
相変わらず血みどろな作風に変化はありませんけれど、世界のシビアさが緩くなってきたような気がします。敵も味方もとにかく沢山死にまくるのがこのシリーズの特徴だったんですけれど、本書では人があまり死にません。まあそれでも脇役はどんどん死んでくんですけど、メインキャラの命がなかなか固いのです。これはちょっとした路線変更なのかもしれません。
本シリーズの一巻、二巻の頃で衝撃的だったのは、あるエピソードで登場してハッピーエンドを迎えたキャラクターが、別のエピソードで再登場したときにあっさり死んでしまうこと。一度終わった物語をぶり返し、綺麗に閉じたと思っていた結末を容赦なくひっくり返してしまうという展開には、何ともいえない無常感を味あわされました。「物語が終わっても世界は終わらない」とは私が勝手に言ってることですけれど、それはこういうことも意味するんだなあと。
というわけで、とりあえず本作はわりとゆったりした展開でしたけど、次がどうなるかは分かりません。次巻から始まる魔女カーミラ編は、本シリーズ最後のエピソードとなるお話。本書で少し緩みを与えて常連キャラクターに愛着を与えたところで一気に……という流れもありえます。ここからの展開、びくびくしつつも楽しみです。
ところで、本書の巻末に載っている特別収録の短編、「死が二人を別つまで」がとても面白いです。作者が恥ずしさのあまり永久封印するつもりだったというこの作品は三家本さんには珍しいラブストーリーなんですけれど、歪みまくった切なさが物凄いです。あの三家本さんはこういうのも描けるのかー、と意外でもありますし、三家本さんが恋愛描こうとしたらやっぱりこうなっちゃうよねー、という納得も。封印なんてもったいない、よい作品だったと思います。