『四季 夏』

四季 夏 (講談社文庫)

S&MシリーズとVシリーズの世界が、一人の天才を中心として怒涛の勢いで収束していく第二巻。Vシリーズは『赤緑黒白』で一応の終結を迎えたものだと思ってましたけど、これを読んでると本質はここからなのではという気すらしてきます。

本当は伏線や登場人物のひとつひとつについてきゃーきゃー言いたいんですけれど、どうやってもネタばれなしに語れない作品の性質が辛いです。誰が出てきた、と言うだけでも面白みを減じてしまいますからね。

ひとつだけ気になるのは、四季さんがどうしてこうも「死」に特別な意味を見出そうとしているのかが、いまいち伝わってこない点。常人が漠然と抱いているイメージで死を特別視するのはよくあることですけれど、そういった矛盾は四季さんの絶対性にふさわしくありません。

では、彼女の死に対する認識が論理的に筋道を立てて示されているかというと、そういうわけでもありません。四季さんが死について思考する場面はたびたび見受けられるんですけれど、その言及の仕方はどちらかというとポエム的です。

死に関する認識は四季さんのこれからの動機に大きく関わっているだけに、そこが甘いと彼女自身の描写にも支障が生じかねません。これは四季さんが「完璧な論理に基づく絶対的な存在」として描かれるか「天才の考えることは常人には分からんなあ」で終わるかの境目なので、これから納得のいく展開になることを期待したいです。