『円環少女(2) 煉獄の虚神(上)』

円環少女 (2) 煉獄の虚神(上) (角川スニーカー文庫)

うぇー、ひっどいお話ですねえ。

隣接する幾多の魔法世界の中で、唯一魔法が存在しないために「地獄」と蔑まれている地球。小学六年生にして犯罪者の刻印を押された鴉木メイゼルちゃんは、魔導師協会の 手駒として血煙吹き荒れる戦場に趣くことを強制されています。自らの命を顧みず、魔法使いとしての誇りを貫くため死地に赴くメイゼルちゃんと、それを偽善と知っていながらも何とか彼女を子供として扱おうとする大人たちの物語です。

とにかくひどい話です。ヒロインのメイゼルちゃんは、死ぬまで戦い続けなければならない「刻印魔導師」として魔導師協会に登録されています。犯罪魔導師を100人倒せば解放されるという建前はあるものの、死ぬ前にそれを実現した者は存在しません。事実上の死刑なのです。人道上の問題を避けるためでしょう、書類上、彼女は年齢を24歳と偽って登録されています。

周囲の大人たちに、彼女を救う術はありません。彼ら自身も、刻印魔導師を戦闘の手駒として使い捨てにすることで、やっと地球の秩序を守っているのです 。メイゼルちゃんに家族のぬくもりを与えたり、同年代の子供のいる小学校に通わせたり、そういった表面的な取り繕いだけが彼らに出来る全てです。彼らは自分たちのしている矛盾に苦悩しているのですが、だからといって解決策があるわけでもありません。

このシリーズは端的に言って、大人が子供を死地に向かわせるお話です。今の段階では、正直なところ私にはメイゼルちゃんが死んで終わる以外の結末をイメージすることができません。

もちろん電撃スニーカー文庫ですから、実際にそういう結末に至るとは思えません。でも、作者に よるお約束補正で何となく生き延びました、みたいなラストで納得できるような段階を、既にこの作品は飛び越えてしまっています。死地に向かわされる子供というテーマがこれほどの強度を持って描かれている以上、それを覆すような結末をそう易々と描くことはできないでしょう。このシリーズがこれからどういった顛末を辿るのか、興味深く見守りたいです。