『謎の彼女X(1)』がみんな変態

謎の彼女X(1) (アフタヌーンKC)

唾液で繋がるコミュニケーション! 電波ゆんゆんの不思議少女が垂らしたよだれを舐めまくるラブコメ漫画。変態ですね。

主人公は特に取り柄もない、平均的で内向的な男の子。異性に興味を持ちつつも実際に何するわけでもなかった彼ですが、不思議な転校生が机に垂らしたよだれを舐めたことでその状況は一変してしまいます。彼女には、よだれ(というか唾液)によって恋愛的コミュニケーションを行うという奇妙な性癖があったのでした。

ってそもそもこの導入からしておかしいです。明らかに電波さんとして描かれてる女の子の方はともかく、平均的で内向的な男の子がクラスメイトの寝よだれなんて舐めますかいな。表面上は普通人として描かれている主人公ですけれど、作者補正というか物語補正のせいで要所要所の言動はやっぱり変態。みんな変態。

あとがきで植芝さんは「思春期の少年と少女の関係」を「ロボットアニメの主人公とロボットの関係」になぞらえて語っています。一見突飛な言い分ですけれど、「女の子は謎だ」というテーマを描いているこの作品を読んだ後ならなかなかしっくり来る譬えだとも思えます。

ヒロインは「唾液の絆」というファンタジー的な根拠から主人公との恋愛を全肯定していて、そういったところはこの手のラブコメのお約束を踏襲しています。とはいえ、実はけっこう我が強かったり、よだれ以外のコミュニケーション手段については妙に保守的だったりと、ヒロインの振る舞いは奇抜ではあってもやはり「女の子」の延長線上にあるような気もします。

そういえばこの作品って登場人物が主人公とヒロインのほぼ二人だけで、脇役の出番がほとんどありません。これだけ延々と「二人の世界」を描き続けられるというのも、なかなか凄いものですね。ともかく見てて飽きないので、のんびりと次巻を待とうと思います。