『アンダカの怪造学III デンジャラス・アイ』

アンダカの怪造学(3) デンジャラス・アイ (角川スニーカー文庫)

気がついたら一年近くも積んでました読了本。

"人間とモンスターが仲良くできる世界"を目指す主人公・空井伊依さんの前に今回立ちはだかったのは、幼馴染の男の子。彼はモンスターを危険な存在と断じ、人間との繋がりを絶とうと目論んでいます。正反対の二人が互いの思想をかけてをぶつかり合うシリーズ第三弾。

"人とモンスターが仲良くする"という主張からして頭に春が来てるっぽい伊依さんのヌケっぷりがいろいろ心配だったんですけど、今回の相手はもっと強敵でした。主義思想のぶつけ合いがテーマなのに、相手の頭が悪すぎるのは正直どうしたものかと思いました。

いろいろ思わせ振りなことを言ってもっともらしく振舞うんですけれど、結局この幼馴染さんの動機は「自分は昔凶悪なモンスターに酷い目に遭わされたから、あらゆるモンスターは危険な存在であり、モンスター学はこの世から消えるべきである」というところに集約されます。これを「自分は昔不法入国者に酷い目に遭わされたから、あらゆる外国人は危険な存在であり、日本は鎖国すべきである」と言い換えると、その理屈の強引さが分かるでしょう。

というわけで、二人の意見の違いが「勝った方が正しい」的展開でうやむやになってしまわないか心配だったんですけれど、これは意外と上手にまとめられていました。つまり、ちゃんと明快な根拠を示した論破という流れ。これには伏線もなかなか効果的に使われていて、けっこう納得できました。もう一年も前の作品ですけど、なんだかんだで成長してるなーと感じられるシーンだったと思います。