『アイソパラメトリック』

アイソパラメトリック (講談社文庫)

幻だった写真短編集の文庫化。2001年に出版された時は本というよりお楽しみ箱という感じで、魅力は感じつつも値段の壁に阻まれて手を出せなかったのでした。今回の文庫化で五年越しの願いが叶い、やっと安心できる値段で入手できたという寸法。

66枚(たぶん)の写真と25枚の超短編、合わせてほぼ100ページほどの分量。文章だけを見ると600円という値段は高いかもしれませんけれど、写真集という側面も合わせて考えればこのくらいでしょう。

ほぼ一ページに収まる分量の超短編は、かなりハイレベルなものが揃っています。即興の感性で綴られているこれらの作品は、どれも評論分析の余地を与えないようなスマートな出来ばえです。こんな作品をさらっと書いてみたいものです。

その横に並べられた写真も、素人目で理解できるくらい素敵なものが揃っています。写真自体も面白いんですけれど、一枚一枚につけられたタイトルがとにかく秀逸。予想もしなかったイメージを喚起して、写真の魅力をよりいっそう引き立ててくれます。

巻末には、2005年に永眠した森都馬氏の日常を移した写真が10枚ほど。存命中の2001年に発行された際はトーマ氏のピンズがおまけで付いていたり、彼とも関わりの強い一冊だったんだなあと気付いて何とも言えない気持ちになりました。