『水滸伝(一) 曙光の章』

水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)

水滸伝! 全19巻の大作ですけど、あまりにも面白そうだったので思わずジャケ買いしちゃいました。108人の英雄が梁山泊に集って大暴れするという荒唐無稽で破天荒な原作が、北方謙三さんの手によって政治・経済などの整合性を兼ね備える正統な歴史小説に生まれ変わった作品です。

腐敗した政治に憤り、新たな世を夢見る男たち。物語は、志を同じくする彼ら百八人の英雄が、一人一人と集っていく段階からはじまります。驚くべきは、それほど沢山の人間が登場する作品であるにもかかわらず、読んでいて一人一人の人格をちゃんと把握できる点。たとえば、この一巻では脇役も含めて既に五十人以上の人格が登場しているんですけど、登場人物一覧で名前を見るだけでも「これはあの人、こっちはあの人」というのがほとんどの場合すぐに思い返せるのです。

権力者の理不尽な罠に嵌められ憤る者、淀みきった世の流れを憂う者、一人一人が心の内に秘めた熱い闘志も丁寧に描写されていて、おおよそ混同するということがありません。まあ、三人一組で登場する盗賊団の首領なんかもいるんですけど、こういった人々も後々ちゃんと書き分けてくれるんじゃないかと期待させてくれるものがありますね。続き楽しみー。