萌理学園バトン参加作品「萌理学園チュートリアル」

村崎弘美


id:vancatさんの「いつもの」に続く萌理学園バトン第二弾。なんですけれど、それとは全然関係なしに書き始めたものなので全力ノールックパスになっちゃいました。むしろゆらぎネタがなんか妙に。精神的これはひどいタグが付けば本望です。画像はスイイカズチは磁油2さんのところからの転載です。

 やあ皆こんにちは。さっそくだけど今から【萌理学園】の説明をはじめるよ。

 君は萌理学園二年生の【村崎弘美】ちゃん(ネーム変更可)。陸上に青春を賭けるわりと硬派な、でもちょっとミーハーな女の子だ。同学年のエース【嶋中さん】とは互いにライバルと認め合う仲、数ヵ月後の大会に向けて今日もトレーニングに励む日々。という感じで君は平和で健康な学園生活をずっとずっと過ごしていた(設定変更可)。

 さてしかし。そんな日常的な日常が、あの日を境いにまさか一変しようとは。君はこの日、部活の帰りにたまたま出くわした帰宅部の後輩・【十勝つくし】ちゃんと一緒に下校の途中だった。
「本当ですよー昨日裏山にでっかいおっきいユーフォーが、あれはトイレの花子さんたち(複数形)が地球に召喚した裏天王星人に違いないです!」
「それは見まちがいだと思う」
 勘違いな後輩の相手をするのは大変だ。でも君はお人好しだから、特に嫌がることもなくつくしちゃんの話を聞いてあげている。そして彼女の話題が裏天王星人の謀略から学園に潜む大量殺人鬼(E:金のしゃちほこ)の恐怖の噂に移ろうとしたまさにその時、
「ぎゃー。」
 なんと突然【空飛ぶ巨大な金のしゃちほこ】が現れて、つくしちゃんの頭をガブリと持っていってしまった!
「ふはは。トイレの花子様をこの学園の裏天皇に据えるという我々の野望がこの小娘に洩れていたので始末した。貴様も見られたからには生かしておけぬ。もぐもぐ」
「え。そんな勝手な。つくしちゃんの頭返してよ」
 微妙に情報が誤まって伝わっていたけれど、こいつはつくしちゃんの言っていた大量殺人鬼に違いない。さあピンチだどうしよう。しかしこの十七年間普通人として生きてきた君は、目下のところ超常とか異能とかに関する耐性も知識も一切ない。
「しかし死ぬがよい」
「そんなー」
 つくしちゃんの頭を嚥下し終えた金のしゃちほこは、とうとう君に向かってその大きな口を開いた。「道満晴明道満晴明」と十回唱えれば金のしゃちほこを撃退できるという学校の怪談的豆知識が当時噂になっていたけれど、運の悪いことに君の耳にはまだ届いていなかった。絶体絶命。しかしここは萌理学園なので、アルカールの法則(第一話でピンチに陥った主人公が絶妙のタイミングで正義の味方に助けられる)が運よく発動したよ。グワシャーン! なんと君の陸上部のライバルの嶋中さんが突然背後から現れて、金のしゃちほこの横っ腹を蹴り飛ばした! 金のしゃちほこは空中分解しながら道路を十メートルも転がって、特撮っぽく爆発炎上まもなく水かけて鎮火したよ。すごい。間に合ってよかった的なセリフを発する嶋中さん。慌てて君はお礼を言うけど、もちろん状況はぜんぜん把握できてない。
「実はああいう化け物はいっぱいいて、私はそれを退治している」
「かっこいい」
 しかしとりあえず命は助かったので、君の心にもわずかな余裕が戻った。
「でもどうしよう。つくしちゃん死んじゃった」
 しかし嶋中さんは後輩の死を悼む君に目を伏せ、悲しそうな顔をするだけだった。遺体の処理は自分に任せろと言う嶋中さんを残し、君は結局その場を立ち去った。

 さて次の日。君は混乱しながらも再び学園に登校した。そこに広がるのは、昨日の出来事が嘘のような何の変哲もない日常風景。
「あれ、つくしちゃん」
「あー先輩おはよーゴザイマス」
「金のしゃちほこに食べられちゃったんじゃなかったの?」
「はい?」
 なんと驚いたことにつくしちゃんは五体満足でピンピンしていた。昨日の事件のこともまったく覚えてない様子。ちなみにつくしちゃんはヤラレ役に用意しただけのキャラだから今後特に出てきません。ともあれ、意外な事態にますます混乱してしまう君。さて、ここでもしも君の運が良かったら、僕自身が君の目の前に現れて解説役を買って出ることになる。
「やあこんにちは村崎さん。僕の名前は羽暮槍一。突然のことが重なって驚いてるかもしれないから、ざっと概要を説明してあげるよ」
 そして僕は滔々と語りだす。この学園には異能者や怪物それに裏社会の権力者や宇宙人未来人超能力者が集結していて、諸勢力のパワーバランスの均衡を保つため常に戦争状態にある。しかし毎日のように死人が出ては学園が維持できないので、犠牲者のほとんどは学内の某施設で蘇生させることになっている。ただしその際には、世界の裏の顔を全て忘れるというペナルティが与えられる決まりなのだと。
「君の後輩の彼女が昨日の今日で生き返ってしかも何も覚えていないのは、つまりそういうことなのさ。びっくりしたかな? アハハハハ」
「びっくりした。でもあんたの知ったかぶりな態度が妙に腹立つ。このアルセス野郎ッ!」
「あれ? なんで僕殴られてんの? うばー」
「ていうか誰あんた」
 そしてはじまる非日常の日常。知ってしまった世界の裏をなかったことにはできないし、世界の方だって君を放っておいてはくれない。
「嶋中さん、私はつくしちゃんを殺した奴らが赦せない」
「あなたが望むなら戦い方を教えてもいい。でも辛いよ」
「構わないから」
 自ら戦いの世界に身を投じる君。けれどそこは軽薄でセカイで視野狭窄で、どこまでも命の安い血みどろが繰り広げられる戦場だった。戦いに次ぐ戦い。学内に蠢く有象無象の異能者たちが、一斉に君に牙を向く。立ちはだかる敵、敵、敵。
「愚鈍極まる現生徒会を廃し、今にも学園の頂点に立とうとされている方のご意向だ。我々の障害となり得る貴様の命と可能性、今この場で断たせてもらう。御免!」
「俺は帰宅する者だ。帰宅同好会の本願は毎日を無事に家に帰ること……そのためなら俺はあらゆる手を尽くす。お前が俺の邪魔をするなら、お前の屍を乗り越えてでも俺は家に帰り着く……!」
「百八人の幼女の臓物を食らえば俺は神になれるはずだった! しかし三十七人目……あそこであいつを選んだのが俺様の運の尽きよ。悪と戦うハイパー幼女……俺は四肢を捩じり切られ、おまけに去勢までされてこのザマさ。へっ! お前らに喋ることなんざ何にもねえよ!」「いや喋ってるし」
「金のしゃちほこめ。図体ばかり仰々しくしよって全く使えぬ奴よ。みちるから聞き出した召喚術というのも存外役に立たぬものよな。ならば第六の花子たるこの坂東桜子が、直々に貴様の相手をしてくれよう!」(ボス戦BGM)
 徐々に明かされていく学園の真相。ひとつ皮を剥くたびに、平和だった学び舎はどんな姿にも変貌する。そして様々な出会い。ある者は君の命を狙い、ある者は君と生死を共にする。しかしその関係すらもまた目まぐるしく流動し、あるいは訣別、あるいは裏切り、そしてまた不可知の思惑による謎の協力者。
「未来であり過去であり別可能性の現在でもある神話世界。彼岸と此岸の繋がりを知り、また彼岸から此岸への影響を知ることが私たち神話研究部の真の目的なのです」(by清水みちる)
「四代目美化委員長【狩野美加】……まさに悪魔か! 物を人を浄化し尽くし、それでもまだ飽き足らずに遍くの消滅を望むとは。ええい、躊躇するな! 全校生徒が束になってもあれを止められるとは限らんぞ!」
「影の生徒会の無闇な群雄割拠とそれを原因とする突発戦の多発。これはどう考えても望ましい状態ではないわ、学園の平和のためにもね。だからそれを整理する、それであなたの力を借りたいと言ってるの。疑う理由があるかしら?」
「代理戦争? そんなものよりもっと重要な核心がこの学園には隠されている。世界と世界を繋ぐ鍵、そして同時に世界のあらゆるエフェクトを制御するエンジンの管理権でもある世界樹たる真出雲。連中はそれを求めて縄張り争いを繰り広げているんだ」
「神が! また神がこの学園に介入するというのか! 全くもって我慢ならんな、ここは人間の治める系だ。御呼ばれでない方々は自分の領分を守っていただきたい! ていうか空気読めよアルセス野郎」
「それが学園祭実行委員会の真の目的か。主導しているのは副委員長の駒井昼子? しかし、あやね◆eY45Z75rvsが絡んでいるとなると厄介であり、」
「ラノベサイト管理人連合の根城を特定した! 萌理学園文学部室ッ! 全勢力を結集させて殴り込めッ! いいか、一人たりとも逃がすんじゃあない! 文系どもに遅れを取るなッ!」
「真剣ギレとらっくバック! 魔法少女はてなちゃんのどの辺が魔法少女なのかサッパリわからないわ!」
「あ、つくしちゃんまた死んでるし」
「ドーマンセーマンドーマンセーマン」
「だめだ、これ以上は抑えきれない! 最早あれを使うしかないのか……永き封印を解き放て! 第四の永久凍土(エターナルフォースブリザード)!!!!!」(言ってみただけ)
「ギィィィィ――――ゼンt(撲殺
「そしてポニーテールVSツインテール最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった……」「ポ、ポニー……!」
 前生徒会の大粛清によって整理された学内は、いまや二つの巨大勢力に分断されていた。そのいずれにも属さずに、ただひたすら自分たちの正しさを全うしようと戦う君たち。そして戦いはますます過酷を極め、志を同じとした仲間たちも学園の血土に一人また一人と散っていく。忍び寄る死と孤独、そして遂に決定的な別れの時がやってくる。
「嶋中さん!」
「いいんだよ村崎さん。今回の戦いは私たちのどちらかが生き延びれば勝ちだった、そしてたまたまあなたの方が走るのが速かった。それだけなんだ。だから走って」
「でも、だけど、嶋中さんを置いてなんて」
「走れ! 私たちは陸上部だ!」
「かっこいい」
 涙を振り切り走る君。翌日顔を合わせた嶋中さんは、もう君と一緒に戦った逞しい嶋中さんではなくなっていた。戦いの記憶を忘れた、ただ自由で平凡な陸上に青春を賭ける女子高生。君はとうとう一人になってしまったね。そして赴く最後の戦い。学園の地下深くに眠る自動生成の超絶ダンジョン、そこがラストバトルのフィールドだった。伝え話だけで聞いていた異世界の神々が徘徊し、過去に倒した敵や死んでいった仲間たちが復活し束となって襲い来る。あらゆる試練を打ち破り、遂に【世界の果てを模した壁】を突破した君。だがしかし、それすらも学園に張り巡らされた巧妙な罠だった。
「君は頑張ったよ、でも相手が悪かったね。学園の平和を守る正義のヒーロー、ただそれだけで終わっておいてもそれなりに満足することができたのに、ちょっと本質から糺そうとしすぎてしまった。この学園の深部はね、一人の頑張りでどうにかなるほど浅いものじゃなかったんだよ。はい残念、ゲームオーバー。あ、でもせっかくだからこの槍は僕がもらっていくね。いぇーい紀元槍ゲットー」

 そして君の戦いは終わった。安心していいんだよ、次に目が覚めたときにはどうせ全て忘れちゃってるから。知らなくてよかったこと全てと、知って後悔したこと全て。これから君は再び陸上部に復帰して、ライバルの嶋中さんに負けまいとトレーニングに励む日々に戻るんだろう。非日常の裏の世界は厳然と存在するけど、それを知らない君にはもう全く関係ない話なんだ。萌理学園は今日も平和。それじゃあ、明日からよい学園生活を。
(※設定は開発中のものです)(※悪いのはアルセスです)