『新世界 2nd』

新世界 2nd (河出文庫)

 かなり込み入った世界観のSFではあるんですけど、相変わらず設定に対する気負いは感じられません。お話を進めるための必要最低限の情報だけを、渋々小出しにしている感じすらあります。

 その一方で、作中に描かれる偏愛的なまでの「少年」への眼差しからは、設定面と打って変わった強いこだわりが感じられます。この作品の世界では種族としての「性別システム」そのものが私たちと全く異なる在り方をしているんですけれど、その中で「少年」は一貫して美しいものとして描かれます。

 逆に「女性」の扱いはなかなか酷いものです。作中の女性は、「一応生きてはいるんだけれど知性を持たない醜い肉塊」という、なんだか俄かには想像できない異形の「種族」として描かれちゃっています。つまり、私たちが当たり前のように受け入れてきた性別観が、この作品では全く通用しないのです。

 巻末の対談でも作者さんの「美少年への愛」(と、もしかしたら女性へのある種の嫌悪)が熱っぽく語られていて、この作品の性別観は彼女の理想的な性別観そのものにも思えます。こういった世界は、たしかにフィクションの中でしか表現できないものでしょう。作家の原動力にも色々だなあと思いました。