『世界の神話101』

世界の神話101 (ハンドブック・シリーズ)

 西洋から東洋、果ては島国の少数民族の神話まで、見開き二ページを一講とした百一の神話学的解説が収められています。各地方ごとに十二名の専門家が執筆に参加していて、著者欄に表記されている吉田さんは編者ということになります。

 各地の神話をデータベース的に網羅するのではなく、代表的ないくつかのエピソードを抜き出すことで、その神話について細かく解説していく形になっています。単純に設定データ的なことが知りたければ「神話大辞典」みたいなものが幾つかありますけれど、本書は神話の成り立ちや民族社会との関係をひと通りさらっておきたい人向けです。

 グノーシス主義北欧神話の項目は、特に印象的でした。グノーシス主義は、キリスト教神話などの元ネタを徹底的に曲解して改竄捏造しまくるアレな精神が素晴らしいです。やってることがそのまんまゆらぎです。北欧神話は、「神々ですら自らの終末を宿命的な結末として覚悟している」という、死と滅びに対する運命観がとにかく強烈。素朴で武骨な英雄譚を好みながら、いつも最後は悲劇で終わるという凄まじい民族性を垣間見ました。