「厄醒し編」其の四
さすがに激しいネタばれ抜きにはあまり語れそうにないので、続きを読む記法で隠します。これからひぐらしをやろうという人はご注意ください。
「厄醒し編」其の四「雛見沢大災害」
冒頭に先週分の長い回想が挿入されるのは時間に余裕がない証拠……! いきなり嫌な予感です。でも回想から連続して本編シーンに移る際のBGMの変調がかっこよくて、緊迫感だだ上がり。来た来た来た。
ここで沙都子ちゃんが梨花ちゃんに言われるまま隠れっぱなしというのは不自然なので、上手く後の展開に繋ぐには軽く催眠スプレーでも嗅がせとけばよかったんじゃないかなと思いました。梨花ちゃんならそのくらい持ってても不思議じゃないですし。
そにれしても工作員の仕事がザルです。梨花ちゃんに沙都子ちゃんという同居人がいることを知らないわけはありませんから、今回の作戦は沙都子ちゃんの処分まで事前に織り込み済みのはず。梨花ちゃんの死体はどうせ村人に発見される予定なんですから、それを見つけた沙都子ちゃんを追いかけるのも変。吊り橋で追いついた時だって、遺体の処理どころか死亡確認すらしないなんてありえません。
前話のあからさまな素人尾行といい、彼ら工作員の正体を思うとこの杜撰さは凄く凄く不自然です。でもこれはもしかしたら悪いばかりではないかもしれなくて、完結編の最後の方になると彼らの仕事って確かにこのくらいザルになっちゃうんですよね。
原作では、完結編前半くらいまでの彼らは恐ろしく精度の高い仕事をしていました。だからこそ、ラストの方で突然あからさまに「弱体化」してしまう落差は大変に不自然で、ご都合主義を地で行くものだったとも言えます。
でもはじめからアニメ版のザルな印象で彼らを捉えておけば、完結編に至ってもあまり落差は感じないでしょう。全体として見れば、結局バランスが取れて見えることになります。そこまでの計算があった上で工作員の仕事が粗く描写されているのか、やっぱり単にお話を練る時間がなかっただけなのかは分かりませんけど。
逃走劇の後は、大災害の様子が沙都子ちゃんの視点から描かれます。これはアニメ版「祟殺し編」でカットされてしまったシーンのやり直しですけれど、視点が本来の圭一さんでなく沙都子ちゃんになっているのが面白い変化です。
ぼろぼろの姿で滅んだ村を歩く沙都子ちゃん。これはなんとも恐ろしい光景で、まるで『はだしのゲン』を見ているような気分になりました。こういったワンシーンを映像として見れるだけでも、アニメ版を見る甲斐はあるなあと思えます。
雛見沢分校では、部活メンバーをはじめクラスメイトや校長先生、知恵先生、公由村長やお魎さん*1の死体までが転がっています。大災害の真の顛末を原作準拠で考えるなら、皆があの校舎で揃って死んでいるはずはないですし、深夜なのに普段の服装というのも妙だということになります。でもこのアニメ版ではそもそも「それが不自然である」という根拠になるような詳細な説明はされないと思われるので、原作ファンが勝手に違和感覚えてるだけとも言えるでしょう。
そしてレナさんにまたひとつ武勇伝が加わりました。沙都子ちゃんの夢の中では一方的にアレされちゃいましたけど、それまでに二〜三人は返り討ちにしちゃってるんじゃないかと邪推します。ひゃああああ一撃で叩き割ってあげるよお。
大石さんの指摘した「行方不明が異常に多い」という問題は原作では言及されたことがなかったように思いますけど、確か立派な「不審点」です。原作で語り足りなかった部分を上手く活かした形で、アニメオリジナルのお話でこういう点に目を付けてくれるのは嬉しいことです。
大石さんが意識不明の病人に乱暴したり証拠品に素手で触ったりしますけど、今さら本気で突っ込むようなことでもないのでスルー。それにしても、証拠不十分なままいきなり真相を看破して大声を上げるのでびっくりしました。大石さんがキバヤシさんに見えました。な、なんだってー。
結局これまでのおさらい+補完という意味合いの強い編でしたけど、一連の事件が「集団的陰謀である」という点をこの段階ではっきり強調できていたのは大きな功績でしょう。このことを印象付けることができたおかげで、「皆殺し編」で明かされる予定の「真相」もアニメ視聴者にとってはさして突拍子もないものではなくなったのではないでしょうか。
ラストはさして余韻もなく、あっさりとEDテーマに入って「厄醒し編」終了となりました。結局どのへんが「厄醒し」だったのか、あまりうまい解釈が思いついてません。誰か意味の分かった人がいたら、ちょっと聞いてみたいものです。
*1:ですよね?