『フリクリ(上)』

フリクリ (上) (講談社BOX)

 絵に魅入るわ構図に魅入るわ台詞に魅入るわでもう大変。漫画という表現媒体でありながら「漫画のお約束」に従ってはくれません。「お約束」の俎上に乗っていないからこそ、漫画表現「そのもの」を真に追求できてもいるんだと思います。

 アニメ版を見てない私にとって『フリクリ』のイメージはこの漫画版で*1、コミックスの初版が出た頃から幾度も読み返しています。それでも、このお話の半分も理解できている自信はありません。

 何度も何度も執拗に読み返すことで少しずつ理解を深めていくことのできる、スルメのような漫画です。細かい描写や総括的な流れの解説・解釈が欲しいところですけれど、そういうのをまとめてるサイトにはあまりお目にかかったことがありません。

 読者各々が自分で読み方を編み出さなければ楽しめないこういった作品こそ、「作品を読み解く」という意味での批評の対象になればいいのにと思います。作品の後ろにどんな主張や背景が隠れているかを見るのもいいですけれど、「作品そのもの」に何が描かれているかをちゃんと考えようとする試みをもっと見てみたいです。誰かやってみませんか。

*1:いちおう小説版も読みましたけど記憶の彼方。