「遺された紀憶」解説三回目。
さて、主人公は冒頭で「湖のほとりまでトントロポロロンズを取りにいって、」と記述していますが、これは一体何なのでしょう。このトントロポロロンズ、実は私たちの言葉で言うところの「豆腐」と同じものを指すらしいです。
萌理学園の神話研究会による分析の結果、「トントロポロロンズ」は「豆腐」と訳してほぼ差し支えないことが確認されています。ただし私たちの知る豆腐と彼らの言うトントロポロロンズには微妙な違いもあるらしいこともまた推測されていて、研究会は次のように発表しています。
- トントロポロロンズは一般に薄い青色の立方体である
- トントロポロロンズは木の枝になる果実である
- トントロポロロンズは正しい手順を踏んで加工することで固く丈夫な素材となる
- 熟れて地に落ちたトントロポロロンズは自立的に行動する害獣トントロポロンとなる
- 一部のトントロポロンは集団で社会生活を営む
と、まあこういった微妙な差はあるんですけど、本質的にただの豆腐であることには変わりなさそうなので、さほど気にすることもないでしょう。
さて、トントロポロロンズのこういった特徴から判断するに、主人公はどうやら湖のほとりに自生している豆腐の実の採集に行ったか、あるいは狩りに行ったと考えられます。
トントロポロンは大陸のほとんどの地域で常食されているので、普通に考えれば、彼の採集したトントロポロロンズは食料として消費されるはずだったのでしょう。あるいは、おそらくは発明家である彼の父親が何らかの目的で豆腐を素材として利用していたのかもしれません。主人公のボディが長年の風化浸食に耐えることができたのはその素材に頑丈な豆腐鋼を利用していたおかげだった、と考えるのはさして不自然なことではないでしょう。