八巻にして遂に……と言うべきなのでしょうか。ようやくにして、主人公すばるさんが「自分以上の才能」によって蹂躙される時がやってきました。
ここまで実に八十数話、第二部も半ばとなったこのタイミングで、やっと"ライバルらしいライバル"の登場です。すばるさんより明らかに格上のプリシラさんをライバルと呼ぶのが不適切なら、「越えられない壁」と表現してもいいかもしれません。
これまで他者に自分の才能を見せつけ、ひたすら圧倒するだけだったすばるさんにとって、初めての「外側の壁」プリシラさんとの出逢いは大きな契機になるのだと思います。
プリシラさんの方も、すばるさんの登場で焦燥感を煽り立てられてはいます。けれど、それはすばるさんの「実力」や「才能」そのものに対する恐怖ではありません。
彼女が感じているのは、すばるさんという若い才能を目の当たりにすることで自分が「安心」してしまうことに対する恐怖です。優れた後継者が現れたのだから、自分はもう「ここ」で止まっていい……という妥協心。つまりプリシラさんの敵はあくまで彼女自身の「内面」に潜むものでしかなく、現実に存在する「すばるさん」ではないのです。
ここでもすばるさんはプリシラさんと対等の位置に立っているとは言えず、何歩も下がったところから追いかけているにすぎないことになります。新しく立ち現れたこの構図が作品の今後にどんな影響を与えていくのか、注目して見ておきたいと思います。