『水滸伝(八) 青龍の章』

水滸伝 8 青龍の章 (集英社文庫 き 3-51)

 前巻を下準備とし、この一巻を丸々使って行われた独竜岡攻め。まさに総力戦、梁山泊にとってこれまでで最も大きな戦いとなりました。

 徐々に死者も目立ち始め、主要登場人物の死が当たり前の作品となってきました。宋という大きな権力を前にして、一人、また一人と死んでいくこの先の展開は想像しただけでも壮絶です。さすがに全員の死を克明に描くことまではされないようで、死んだという情報が後から知らされるだけの人もいます。それにしても、一人一人の死が強烈に印象に残る作品です。

 一巻から梁山泊のライバル格として登場していた李富さんが遂に覚醒したかのような怒涛の活躍を見せはじめ、逆に彼の覚醒を画策した聞煥章さんは初の大敗によって大打撃を受けることになります。敗北後の聞煥章さんの様子は今巻では描かれていないので時間に持ち越しですけれど、彼がこの苦境をどう乗り越えるのかが見るべきところのひとつになってくるんだと思います。

 それにしても、一丈青扈三娘さんはすごい状況に置かれたものだと思います。彼女は一族郎党を梁山泊に皆殺しにされたようなものですけれど、原典に従うなら彼女はこれから梁山泊への仲間入りを果たすはずです。一体ここからどういう流れでそういう決着に至るのか、ちょっと想像がつきません。