鏡音リンのロードローラーのイメージを覆す対抗馬 ジェバンニPが4晩連続でやってくれました

 ボーカロイド鏡音リン・レンがリリースされてからはや10日が経とうとしています。情勢を見るにリン・レン共にすっかりロードローラーネタが定着してしまったようで、ニコニコ動画を「鏡音リン」で検索するとくどくて濃ゆい顔のリンさんを拝めます。

 ロードローラーでぺっらぺらにされるのも楽しいんですけど、ここらで非ロードローラーな正当派曲にも光が当たって欲しいところです。でもやっぱりロードローラーの激烈なインパクトにはなかなか太刀打ちできない……と思っていたら、面白い作品群を見つけました。

鏡音リン・レン」発売の翌日から12/28から12/30にかけての3日間でなんと4作のオリジナルソングを発表し、しかもそのまま颯爽と引退してしまった無名にして伝説のアップ主がいたというのです。

【鏡音リン】リンリンリンってしてくりん【オリジナルソング】


【鏡音リン】リンカーネーション【オリジナルソング】第2段


【鏡音リン】ドント☆クライ【オリジナルソング】


【鏡音リン】 さよなら、ニコニコ動画 【オリジナルソング】

 スタートダッシュが早かったせいか、第1弾の「リンリンリンってしてくりん」はリンオリジナル曲の中では「逆襲のロードローラー」に次ぐ再生数16万回を誇っています。全4作を合わせると再生回数は30万回達し、数の上ではロードローラーに追随する勢いです。実際、初めてボーカロイドに触ってたった一晩(実質半日)で作品を作り上げたという驚きを差し引いても、曲、歌詞、調整、いずれも高水準の作品だと思います。

 ただし、第4弾の「さよなら、ニコニコ動画」で、作者は突然の引退を宣言しました。見てる側にとっては鮮烈な登場だっただけに、この突然の引退もまた衝撃的でした。その後、実際に彼の作品がニコニコ動画にアップされることもなく、通称「ジェバンニP」は幻の人となったのでした。

 動画の最後に記された「X-FILM」とうい文字列で検索してもそれっぽいのは当たりませんし、ジェバンニPは一切の痕跡を残さず完全に消息を経ったかのように思われました。ところが、彼の正体は意外な場所で明かされていたのです。

 それは、とあるフリーゲーム制作サークルが放送していた年末のネットラジオでした。その放送の中で、この鏡音リンオリジナル曲が流されていたそうです。ジェバンニPの正体は、10年も前からWeb上で活動しているフリーゲーム作家だったと言うのです。

 このフリーゲームサークルは名を「アンディー・メンテ」といい、その中心人物であるジスカルド氏こそがジェバンニPその人だったようです。彼は自分のゲームのプログラム、ストーリー、イラストなどのほとんどを自分自身で手掛けている多才な人で、その能力の中には作曲も含まれていました。

 そう言われてみればなるほど、ジェバンニPの作詞・作曲の傾向はアンディー・メンテの過去の音楽作品と通じるものがあることは、動画投稿時からコメントによって指摘されていました。動画中で使用されているイラストも同様、ジスカルド氏の絵柄を思わせるものです。

ウトナと3人の騎士 OP


【みんな】メリークリスマス アンディーメンテ【生きてね】


アンディーメンテ - merryX'masMiss.Y,our life is perfect.


REIsMedicine

 そして何より、これらの曲のピアプロでのアップロード者の名前は、ジスカルド氏の別ハンドルと同じ「sismi」となっています。ジェバンニP=ジスカルド氏という推測は、どうやら間違いないようです。

 活動期間たった三日というジェバンニPの引退を惜しむ声は、やはり多いようです。動画のコメントには、新曲の制作を望む声も見られます。今後彼が再びニコニコ動画での活動に復帰するかどうかは分かりませんが、過去のアンディー・メンテの曲に触れてみることはできます。幸いなことに、アンディー・メンテの映像音楽作品の多くはニコニコ動画でもアップされています。

 もちろん実際にアンディー・メンテのゲームをプレイすればより多くの楽曲を聴くことが可能ですし、公式サイトでは音楽CDも販売されています。鏡音リンの「キャラクター」を使っているので著作権的にややこしいところはあるのかもしれませんが、今回の鏡音リンソング自体もCDにまとめて販売となる可能性は……あるんですか? よく分かりません。

 ちなみにこのジスカルド氏は、昨年の講談社BOX新人文学賞流水大賞」の受賞者で、多分おそらく小説家デビューを控える身でもあります。たった3日間であっという間に4作の鏡音リンオリジナルソング発表し、そのまま風のように消え去ったアップ主が実はアマチュアゲームプログラマで、しかも文学新人賞の受賞作家でもあったなんてなんとも数奇な話ではないでしょうか。

 ロードローラー関連ではいくつかの派生作品が既にアップされていますけど、ネタ的でない方向性で鏡音リンに注目するなら、まずはこれらの曲から押さえていくのがいいでしょう。ジェバンニPの4曲は、ロードローラの対抗馬にもなりうる勢力なのではないかと思います。