『MOON(1) 昴 ソリチュードスタンディング』

Moon 1―昴〈スバル〉ソリチュードスタンディング (ビッグコミックス)

 MOONというタイトルが、バレエの美しさによって月面人と心を通じ合わせるという壮大なエンディングへの伏線であっても、もう私は驚きません。

 プロダンサー編が始まるときは、新天地での新しい舞台を環境から登場人物からと丁寧に描写し直していましたけれど、今回はもういきなりお話を進めてますね。どんな環境だろうと昴さんがやることは同じなのだという感じで、新たなスカウト主の説明もろくにないままひたすらダンスダンスダンス。

 曽田さんは、昴さんの凄さを描写するためならなんだって利用します。今回も、盲目のニコさんがラストでどうにかなってしまったようですし。そのうち、「バレエの力で紛争を解決しました」とか「余計に酷くなりました」とか、そのレベルのことを本気でやりそうな気がします。


 普段は平気でレッスンをブッチするくせに、ときどき昴さんが垣間見せる強烈なプロ意識はなんなんだろうと思っていたんですけれど、このブレってよく見ると「踊った以上は観客から御代をいただく」という一点に絞られている気がしました。

 観客がいてはじめてダンスが成立するという感覚は、第一巻の弟のエピソードを源としてずっと彼女の根底に流れ続けているのだと思います。それがお金と直結しているのは、昔キャバレーで荒れくれ者のお客を相手にしつつお金を払わせることで実力を認めさせた証としてきた経験から来てるのかなとか。