『ドラマCD ひぐらしのなく頃に 暇潰し編』

ドラマCD ひぐらしのなく頃に?暇潰し編?

 3枚組。今回も内容みっちりです。細かい変更や省略はあるにしても、やはり原作に忠実で堅実な内容。文章で状況をしっかり描写した方が面白いところもありますけれど、声優さんの演技もやっぱり大きな力を持つもので、ここぞというときの瞬間最大風速は原作を凌駕していると思います。

 アニメやゲームと異なり、この編の主人公である赤坂さんの役は子安武人さんが務めています。子安さんにはゼクス・マーキスとかレザード・ヴァレスのイメージしかなかったので、赤坂さんにはちょっとかっこよすぎるかなーと聴く前は思ってました。でも実際聴いてみると、「初々しくてちょっと頼りない若者」の演技もなかなか堂に入っていていい感じだったと思います。終盤の捕り物での「命乞い」の演技なんか、もう迫真の情けなさでした。

 暇潰し編の、というかひぐらし出題編の最大の見所はこのお話の後日談だと個人的には思っていて、このドラマCDでも期待のいちばんの焦点でした。その期待は、十分以上に満足されたと思います。赤坂さんの慟哭もさることながら、大石さんの決意の叫びは原作以上の強さをもって心に届きました。

 ひぐらしって、基本的に「手遅れ」の物語なのだと思います。もちろん解決編の後半以降は状況がどんどん覆されていくんですけれど、その展開は「同じ過ちを繰り返したくない」という登場人物たちの強い意志によって駆動されているところがあります。この「意志」がはじめて明確に現れる場面が、出題編の最後の最後にあたるこのシーンだというのはなかなか面白い構成になっているんだなと思いました。