『新世界 5th』

新世界 5th (河出文庫)

 一年くらいかけて、一冊ごとに間を空けてゆっくり読みました。そのせいで、記憶がおぼろげでお話の全体を把握しきれなかった気がするのが残念です。でもこの記憶のあいまいさは、本作の漠然とした雰囲気によく似ている気もします。

 二者が情事を交わすに際して、生物的なレベルで必ずどちらか一方の絶対的優位が約束されてしまう。そういう性別システムによって、私たちがごく自然なものとして受け入れている「恋愛」の倫理体系がまったく機能しない世界が描かれています。こういう架空の倫理観を描くことが、SFや幻想小説のひとつの本願なのかなと思いました。

 でもお話としてはやっぱりよく理解できなかったので、どこか解説とかしてくれてる人を探したいです。もしくは、この人のもっと短い作品に触れてみるとか。次に読むなら、やっぱり『少年アリス』あたりでしょうか。