『水滸伝(十八) 乾坤の章』

水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)

 後半のあるエピソードで、このお話は完全に水滸伝という原典の「枠」を越えたなあと感じました。次シリーズへの布石となる楊令さんは別としても、もうこの人を原典の百八星に続く新たな一星として付け加えてもいいじゃない、とまで思ってしまう展開でした。全く予想していなかったところに不意打ちを食らった気分で、読んでいてなんだかともて気分がよかったです。

 人が百八人もいればどうしても「はずれくじ」を引く人がいて、志半ばで散っていったりいいとこなしで死んで行く人もいます。この巻で死んでいった何人かは正直あまり好漢っぽい死に方じゃないなあと思ってしまいましたけど、だからと言って作者にないがしろに扱われたような感じはありませんね。

 意外と北方さん、小心な人は小心なりに、ちゃんと筆を割いて描いていると思います。北方さんの小説はどうしてもマッチョな人に目が行きがちですけれど、こういう凡庸な人が一方的に唾棄されているかというと実は決してそんなことはないのかなと。

 残り一巻。もはやどんな感想を書いても野暮、というか感想書いてる間に続き読みたいので続き読みます。